経営事項審査(経審)とは
略して経審と呼ばれることのある経営事項審査とは、公共工事への入札に参加を希望する建設企業が受けなければならない審査です。
経営事項審査の受審は、平成6年の建設業法改正により、公共工事への入札に参加を希望するすべての建設企業に義務付けられました。
公共事業を発注する機関は、入札に参加しようとする建設企業の資格審査を行いますが、資格審査では、まず欠格要件に該当しないかどうかを審査し、次に客観的事項と発注者別評価の審査結果を点数化することで、建設企業をランク付けします。
経営事項審査は、資格審査のうち、客観的事項を審査するために必要です。
経営事項審査の審査事項
経営事項審査で審査される項目は、経営規模、経営状況、技術力、その他の審査項目に区分されており、それぞれの点数を一定の計算式に当てはめ、総合評定値を算出します。
経営規模は、完成工事高、自己資本額・利払前税引前償却前利益で構成された審査項目です。
経営状況は負債抵抗力、収益性や効率性、財務健全性、絶対的力量、技術力は技術職員数と元請完成工事高から点数が算出されます。
その他の審査項目は、労働福祉の状況や法令順守の状況をはじめ、社会性等を審査する項目です。
建設企業は、経営事項審査を受けることによって取得できる総合評定通知書を発注機関に提出しなければなりません。
経営事項審査には有効期限があり、総合評定通知書を受領した後、その経営事項審査の審査基準日から1年7ヶ月となっている点に注意が必要です。
経営事項審査を受けるとどうなる?
経営事項審査を受けることで、建設企業は入札に参加でき、落札できれば仕事を受注できます。
他にも、経営事項審査を受ける建設企業は、様々なメリットが期待できます。
経営事項審査を求める民間工事に参入可能
経営事項審査は、公共工事の入札に参加する際に義務付けられていますが、民間工事でも経営事項審査を求めている場合があります。
特に、国や自治体から補助を受けていたり、マンションや商業施設の修繕など大規模な工事をしたりする場合、経営事項審査が条件となることもあるため、公共工事への入札を考えていない企業でも、経営事項審査を受けておいて損はないでしょう。
経営事項審査の結果公開で信頼性をアピールできる
経営事項審査の結果は、仕事の依頼者が建設企業の信用度を確認したり、建設企業が自社アピールをしたりする際に活用できます。
経営事項審査の審査結果は、公共工事の入札に参加希望の企業を選定する過程の透明性を向上して公正さを確保したり、相互監視による虚偽申請を防止したりするため、オンライン上で公開されます。
誰でも審査結果を閲覧できるため、民間企業や個人の施主が依頼する会社を選ぶ際に、各建設企業の経営事項審査の結果を見て信頼性を見極めることもあるでしょう。
また、建設企業は、審査結果を自社の実績アピールに使用できるため、評価点が高ければ仕事を得られるチャンスが期待できます。
自社の現在の経営状況を客観的に把握できる
経営事項審査を受けることで、建設企業は自社の経営状況を客観的に把握でき、改善点を見つけやすくなります。
会社の経営は、資金や人材、技術など様々な問題がつきまといますが、企業は自社が成長するために、問題を発見して解決しなければなりません。
多くの建設企業にとって、現状把握、問題点の洗い出しは容易ではないでしょう。
経営事項審査は、全国共通のルールに基づき、公正に審査された結果なので、建設企業は自社と他社を比較でき、自社の課題が見えやすくなるメリットがあります。
公共事業を扱う会社なら安定した会社だと言える?
公共事業を扱う会社は、安定した会社だと言えます。そもそも建設業には閑散期があり、1年を通してずっと仕事を受注できるとは限りません。
しかし、公共工事は、民間工事よりも工事規模が大きい場合が多く、長期的に受注できるため、公共事業を扱う会社では仕事が安定するでしょう。
また、公共事業は、発注者が国や自治体であるため、貸し倒れの心配がない点も、建設企業が安定する理由の一つです。
公共事業は、人々の生活を支える仕事であるため、今後も無くなることはありません。特に、自然災害が多い日本では、災害時に公共事業の需要が高まります。
公共事業を請け負う会社は、国や自治体からも信頼されている証拠であり、信頼性の獲得は、建設企業のさらなる安定につながるでしょう。
まとめ
経営事項審査を受ける最大のメリットは、公共工事の競争入札に参加できることです。経営事項審査を受けて公共工事を受注することで、実績のある業者としての信頼性や評価も高まります。
もちろん、公共工事の入札に参加しない企業は経営事項審査を受けなくても問題ありません。しかし、公共工事への入札予定がない建設企業も、経営事項審査を受けることで様々なメリットが得られることを知っておくと良いでしょう。
例えば、経営事項審査を受けてその情報が公開されれば、自社の存在や実績をアピールすることができ、民間工事の発注を受ける可能性も出てきます。さらに、自社の経営状況を客観的に把握するいい機会にもなります。
公共工事の入札に参加する意思のない建設企業も、経営事項審査のメリットに着目し、経営事項審査が会社にとって必要かどうか見直してみるのがおすすめです。
建設企業の中には、経営事項審査の手続きの煩雑さや申請費用などのデメリットに目がいき、経営事項審査を受ける考えのない企業もあるかもしれません。
公共工事の入札に参加する意思のない建設企業も、経営事項審査のメリットに着目し、経営事項審査が会社にとって必要かどうかを見直してみると良いでしょう。