
林業と造園業、どちらも樹木と関わりが深いイメージですが、この2つの仕事にはどんな違いがあるのでしょうか。
そこで本記事では仕事内容や作業環境、求められるスキルなど、さまざまな方面から比較してみましょう。

林業と造園業とは?
林業と造園業の違いについて見ていくために、それぞれがどんな仕事なのか、個別に紹介します。
林業とは
林業とは、苗木を植えたり樹木を育てたりしながら森林を維持管理し、生長した樹木を伐採して林産物を生産する仕事です。
苗木を山に植え付け、定期的に下草やつる植物を刈り取ったり、枝打ちや間伐を行ったりしながら、木材として利用できるように育てていきます。
また広い意味では、木材以外の林産物の生産や、きのこ、山菜、野生動物といった、森林に生息する野生生物の生産、採集、狩猟もまた、林業の一端と捉えられています。
森林は木材や林産物を提供するためだけに維持管理されているわけではありません。
森林は、水源の確保や土砂流出の防止、温暖化対策などの機能も持っています。
林業は木材や林産物の生産を通じて、森林が持つさまざまな機能を利用するために、森林を守り育てる仕事でもあるのです。
造園業とは
造園業の仕事は、樹木を植えたり石をすえ付けたりして、庭園、公園、緑地を作ったり、道路、建築物の屋上を緑化したりすることです。
具体的には、個人住宅、集合住宅、商業施設や宿泊施設などの庭や、公園、緑地をつくっています。
造園業の仕事はこれらを新しく作るだけではありません。
完成したものや既存のものが、美しく健全な状態を保てるよう、定期的なメンテナンスを行うことも、造園業の大切な仕事です。
造園業が携わる空間はどれも、私たちの暮らしと密接に関わる場所が多いのが特徴です。
たとえば公園や緑地は、ヒートアイランド現象の軽減や生物
多様性の保全につながるだけではなく、防災機能としても役割も有しています。
造園業は、庭、公園、道路など、私たちの暮らしの中にあるさまざまな緑を生み出し、それを守り育てることで、より快適で安全な生活空間を提供しているとも言えるでしょう。

作業環境と働くフィールドの違い
林業は主に、山や森林など、人里から離れたところで仕事をすることが多いでしょう。
また山や森林は基本的に平らではありません。
林業では、作業場に着くまで険しい山道を分け入っていかなければならなかったり、急斜面で作業しなければならなかったりします。
一方で造園業は、庭や公園、道路など、都市空間の中で働くことが中心です。
造園業の仕事は人々の暮らしと密接に関わっているため、どうしても生活圏での仕事が多くなるのでしょう。
同じように樹木を扱う仕事ではあるものの、それらが生育している場所が異なるため、林業と造園業が活躍するフィールドは異なるのです。

求められるスキル・道具・資格の違い
林業ではチェーンソーや林業用車両など、さまざまな道具・機械を使いますが、種類によって、使用する際には資格が必要です。
そのため担当する作業によっては、これらの専用機械を使うスキルが求められるでしょう。
たとえばチェーンソーを取り扱うときには伐木等の業務に係る特別教育、木材加工用機械作業主任者、伐った丸太を積み上げるときに必要な、はい作業主任者技能講習などの資格があります。
このほかにも、合理的な森林経営や木材生産、森林の保護、管理に関する専門的な技術者に与えられる林業技士の資格や、森林の育成と木材などの林産物生産に関する技能と知識を評価する、林業技能検定もまた、林業に携わる人の技能の証しとなる資格です。
造園業は庭、公園、緑地などを美しく整える仕事でもあるので、芸術的なセンスを求められるでしょう。
また顧客との関わりも多いため、コミュニケーション能力も必要です。
造園業と言うと剪定バサミを使って木を切るイメージが強いですが、高所で作業する場合には高所作業車を用いたり、バックホウなどの重機を使って地面を整地したりもしています。
これらの建設機械の中には、免許や資格がないと使用できないものがあるので、とくに実作業で必要なスキルです。
また大規模な工事を請け負ったり、施工管理者として働いたりするときには、造園技能士や造園施工管理技士の資格が必要になるケースがあります。

将来性とキャリアの選び方の違い
林業で働く場合、最初は基礎的な技術と知識を習得するために、作業士として働くのが一般的です。
その後、現場の責任者を経て、事業管理や経営計画の立案にも携わる統括責任者として働く道が多いでしょう。
自分で林業会社を立ち上げたり、森林所有者に森林の育成や管理方法について提案する森林プランナーとして独立したりする道もあります。
木材生産だけではなく、環境保護や水源確保のなどの役割を持った森林を守り、育てる林業の仕事は、私たちの暮らしに欠かせない産業です。
林業は将来にわたって必要とされる産業の1つでしょう。
造園業の仕事も、まず作業者として経験を積み、その後は現場をまとめるリーダーとして作業の指揮監督をしたり、後輩の育成に携わったりするのが一般的です。
この間に、実務経験が必要な関連資格の取得を目指します。
その後は同じ会社で管理職として働く場合もありますし、独立して起業する場合もあります。
専門的な知識を活かし、環境や緑地の専門家として別の業界へ転職することも可能です。
環境への意識が高まっている昨今では、緑化政策の推進や持続可能な社会の実現に注目が集まっています。
これらを実施するためには、造園業の知識や技術が欠かせません。
造園業もまた、これらの私たちの暮らしに必要不可欠な産業なのです。

まとめ
林業は木材などの生産のために、森林を守り育てる仕事です。
対して造園業では主に、庭、公園、緑地などを作り、それらを維持管理しています。
同じように樹木をはじめとした植物や自然を相手にした仕事ですが、作業環境や使用する道具、必要なスキルや資格は異なります。
キャリアの積み方も異なりますが、どちらも将来にわたって、私たちの生活に必要不可欠な産業である点は、共通しています。