
日本の平均気温が上昇傾向にある中で、脱炭素社会を目指す重要性や持続可能な社会の実現に注目が集まっています。
植物と関わりが深い造園業でもこの動きは同様で、SDGsに取り組む造園会社もたくさん出てきています。
脱炭素社会について学ぼうとするときによく出てくる言葉の1つに、カーボンニュートラルがありますが、正しい意味や詳しい内容を理解していないこともあるでしょう。
そこで本記事ではカーボンニュートラルとはどんな意味なのか、造園業との関わりを含めて詳しく解説します。

カーボンニュートラルって何?造園業とどう関係があるの?
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量を、全体としてゼロにする、という取り組みを意味します。
この「全体としてゼロ」というのがポイントです。
温室効果ガスは私たちの日常生活や経済活動に伴い発生しますが、これを全く排出せずに生活することは難しいでしょう。
そこで、可能な限り排出量を減らしながら、吸収量や除去量を増やし、実質的な排出量をゼロにする、というのがカーボンニュートラルなのです。
日本で排出されている温室効果ガスの約90%が二酸化炭素であるため、二酸化炭素の排出量を抑え、吸収、除去量を増やすことが重要視されています。
環境省の報道発表によると、日本における2023年の二酸化炭素排出量は、約9億8900万トンでした。
この二酸化炭素吸収の大半を担っているのは、日本の国土の約3分の2を占めている森林です。
ですが同じようにまとまった植物群がある、都市部内で緑化された場所もまた、二酸化炭素吸収源として期待されています。
環境省の同報道によると、2023年の吸収源対策による合計は5370万トンでしたが、そのうちの約2.4%にあたる約130万トンは、都市緑化活動に伴うものでした。
この割合は、森林、農地土壌に次いで大きいものです。
引用: 2023年度の温室効果ガス排出量及び吸収量(詳細)
https://www.env.go.jp/content/000310279.pdf
この都市緑化に関わる業界の1つに、造園業があります。
都市緑化とは私たちが暮らす都市空間に植物を植え、みどりを増やす取り組みのことです。
たとえば屋上緑化や壁面緑化、街路樹の整備なども、都市緑化の一部です。
商業施設やマンションの庭、学校、病院などの公共施設などをみどりあふれる空間にすることもまた、都市緑化の1つと言えるでしょう。
そしてこれらを実際に設計、施工したり、手入れをして維持管理したりしているのが、造園業です。
造園業は都市緑化を通じて、カーボンニュートラルに取り組んでいると言えるでしょう。

木や植物はどうやって二酸化炭素を減らしているの?
木や草花などの植物は、光合成をすることで二酸化炭素の減少に一役買っています。
光合成とは、葉緑体を含む緑色植物が太陽の光を利用して、二酸化炭素と水から、デンプンなどの有機物を合成し、酸素を放出する働きのことです。
この二酸化酸素を使って、有機物を合成している点が、二酸化炭素減少のポイントです。
光合成では、大気に含まれている二酸化炭素を吸収し、それを糖やデンプンなどの有機物に変えています。
有機物とは、炭素を含む化合物で、燃焼することで二酸化炭素と水を生成するもののことです。
つまり植物は、光合成の過程で、大気中から吸収した二酸化炭素を炭素の形で固定しているのです。これを炭素固定と呼びます。
植物の中でもとくに樹木は、木材として加工されたり、木製品になったりしても、それを燃やさない限りは炭素として固定されたままです。
光合成を行い、炭素固定をしているのは、樹木や草花といった陸上の植物だけではありません。
海中の植物プランクトンや藻類も同じように光合成を行い、二酸化炭素を吸収しています。
このように植物は光合成を行うことで、二酸化炭素を減らす役割を担っているのです。

造園の仕事で地球にやさしいことができるって本当?
造園業の仕事は、環境負荷低減やグリーンインフラの整備など、さまざまな形で地球環境に配慮し、持続可能な社会の実現に寄与しています。
そもそも造園業の仕事として公園や緑地をつくったり、維持管理をしたりすることは、カーボンニュートラルの実現や資源の有効活用につながります。
これに加えて現在多くの造園業の会社では、それぞれの会社でSDGsに取り組んでいます。
たとえば造園業では、剪定した枝葉や、芝の刈りくずといった廃棄物が発生しますが、これらをリサイクルして肥料や土壌改良剤として利用し、樹木の生長を促すことで二酸化炭素の吸収率を高める、という取り組みをしている会社があります。
剪定枝をチップ化して再利用することも、環境負荷の低減につながる取り組みです。
公園や緑地の維持管理作業で、エネルギー効率の高い機械を利用したり、水や化石燃料の使用量を削減したりすることも、有効的な手段でしょう。
このように造園業はさまざまな形で、地球にやさしい取り組みを実施していると言えるでしょう。

まとめ
カーボンニュートラルは、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を減少させ、吸収量、除去量を増やして排出量とのバランスをとり、全体としてゼロにするという取り組みです。
温室効果ガスの中でもとくに排出量が多い二酸化炭素は、植物の光合成によって吸収されるため、森林や海洋、農地などでの吸収が期待されています。
また公園、屋上緑化、壁面緑化など、都市部内で緑化された場所でも、二酸化炭素は吸収できます。この都市緑化を担っている業界の1つが造園業です。
造園業では公園や緑地などを実際につくったり維持管理したりすることで、都市緑化を通じたカーボンニュートラルに取り組んでいます。
都市部に緑地を増やすことは、環境負荷の低減やグリーンインフラの整備にもつながります。SDGsに取り組む造園業の会社も増えています。
造園業はさまざまな形で、地球にやさしい取り組みをすることができる業界なのです。