アーボリカルチャーとは
海外で発展してきたアーボリカルチャー。アーボリカルチャーは英語でarboricultureと表記し、直訳すると樹芸です。
近年、日本でも林業のみならず、造園業で浸透してきているアーボリカルチャーとは、樹木栽培や土壌管理、診断や治療技術など樹木管理技術の総称です。特殊伐採もアーボリカルチャーの一部です。
特殊伐採とは
特殊伐採とは、狭い場所や高い所にある樹木を根元から倒さずに伐採することです。危険な場所での作業が多い特殊伐採は、安全確保の仕方、ロープやチェーンソーをはじめとした道具の使い方などをしっかり修得しておかなければなりません。
アーボリストとは
樹木に関する専門的な知識や高度な技術を持つ専門家をアーボリストと呼びます。レクリエーションとしてのイメージが強いツリークライミングは、アーボリストが開発した技術です。実際に、アーボリストにとって、ツリークライミングは重要な技術で、現在ではツリークライミング専用の道具もあります。
アーボリカルチャーは、林業と造園業の垣根を超えた新たな職業としての地位を築きつつあり、現在では専門の会社も存在しています。
アーボリカルチャーの必要性とは
欧米で発祥したアーボリカルチャーが日本でも浸透してきているのには、理由があります。
日本の樹木事情
アーボリカルチャーが浸透してきている背景には、戦後に植えられた街路樹や個人宅、公園などの樹木が大木化していることが挙げられます。
生育する樹木は、手入れをしなければ、枝葉が伸びすぎて電線に接触したり、日陰を作ってしまったりして、人間の生活環境に悪影響を及ぼします。
また、病気にかかった樹木や老齢の木の場合、景観も良くないですが、枯れて倒れてしまう危険性も高いです。
樹木の周辺を建物や道路が囲っているような状況で、伐採する必要性の高い樹木を木の根元から伐採した場合、建物や車、人などに被害が出るでしょう。また、伐採したい木があっても、墓地や寺社など重機を使用できない場所もあります。
林業や造園業で行われている通常のやり方で樹木を伐採できない時、アーボリカルチャーの分野の一つである特殊伐採が必要になります。
日本の林業事情
現在の林業の在り方は、昔のものとは異なってきています。現在の林業は、土木作業が増えたり、木材の用途が変わったことで皆伐を進めたりして、林業の従事者の中には、林業に対する理想と現実とのギャップに失望する人もいるようです。
また、林業は怪我や事故のリスクが高い職業であるにも関わらず、待遇が良いとはいえず、労働者の定着率は高くありません。
一方、アーボリストは専門的な技術や知識が求められますし、仕事の際にリスクも伴いますが、作業量に対し、収入は比較的良いといわれています。しかし、収入以上に、アーボリストは木の上で作業したり、作業に必要な技術力を磨いたりすることに魅力を感じ、仕事に没頭している場合が少なくありません。
今後、林業では特殊伐採の仕事も増えることが予想されるので、特に林業を担う若い人にアーボリカルチャーの魅力を知ってもらうことが必要でしょう。
必要な資格や研修はある?
アーボリカルチャーは、知識や技術以外にもリスクマネジメント能力が求められます。
日本でのアーボリカルチャーの認知度はまだ高くありませんが、日本にもアーボリストの養成所があり、アーボリストと認められる資格の取得も可能です。
アーボリストの養成所
日本国内に1ヶ所だけあるアーボリストの養成所は、ATIと呼ばれています。ATIとは、Arborist(R)Training Institute (アーボリスト(R)トレーニング研究所)を省略した名称です。
アメリカに本部を置き、世界中に支部を持つISA(International Society of Arboriculture)は、ATIをアーボリストトレーニング組織として認めています。ISAは、樹木に関連する職業に関して、世界共通ガイドラインを策定しており、ガイドラインは国際基準として世界中で採用されています。
研修
ATIでは、様々な講習会やセミナーを行っています。アーボリストに求められる知識や技術だけでなく、指導者を育成するプログラムもあります。
また、ATI以外にも、アーボリカルチャーに必要な技術や知識を教授する研修会を開催している企業があります。研修会では、ロープクライミングやチェーンソーテクニック、レスキュー実技など様々なことを学べます。
資格
アーボリカルチャー(特殊伐採)に関連する資格として、ATI認定資格の樹護士アーボリスト(R)や認定マスター樹護士アーボリスト(R)などがあります。
しかし、まだ日本ではアーボリカルチャーの認知度が低く、研修機関も少ないので、書籍やインターネット上の情報、動画などで得た技術を真似ている人が多いかもしれません。
しかし、資格を取得することで、世間からは世界で通用するプロと認識され、国内だけでなく、海外からも仕事を任されることがあるでしょう。
現在日本では、アーボリストの資格取得者は数十人しかいませんが、今後、アーボリストの認知度が高まるに伴って、資格取得者も増えるでしょう。