造園業は危険じゃない!墜落事故を予防して安全に仕事に取り組むポイント

造園業での墜落事故は多い?

造園業では、注意を怠ることで不慮の事故につながるケースが存在します。

厚生労働省が各労働基準監督署への届け出をもとにまとめたデータによると、令和4年における造園業を含めた建設業の死傷者数は14,539人で、このうち4,594人が墜落・転落によるものでした。

割合にすると3割近くにのぼり、注意すべき事故として最も多いのが現状です。

厚生労働省 令和4年度労働災害発生統計
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/tok/anst00.html

では、造園業ではなぜ墜落・転落事故が多いのでしょうか。
それは、仕事内容が大きく影響しています。

造園業では高木の剪定や伐採などの際に高所作業を行います。

この作業は一般的な建設工事の高所作業とは異なり、作業する場所がでこぼこしていたり、低木、庭石などがあったりして、足場を設置しにくいため、不安定な状態での作業が多くなりがち

また庭の中心部へは高所作業車が侵入、接近できないため、事故が多くなりやすいのです。

そのため、脚立を使用したり枝に乗ったりして作業しますが、樹木の上部には身体を支えたり吊り下げたりする器具を設置することができないため、墜落や転落につながりやすくなります。

このことをふまえて東京労働局では、令和5年3月に「造園業における労働災害防止の徹底」を要請しました。

危険を予防できれば、安全に働くことも可能なので、防止策を一つずつ確認していきましょう。

危険を予防して安全に仕事をするには?

東京労働局では、労働災害を防止するために、「事前調査と計画作成」「作業手順の確認とKY活動」「墜落防止対策の徹底」「安全衛生教育の実施」の4つを取り組むよう求めています。

この4つのポイントを押さえて仕事をすると、危険を予知して安全に作業することが可能です。

事前調査と計画作成
まず工事前に作業場の確認を行いましょう。高所作業を行うときには、作業床や足場の設置は可能か、高所作業車は使用できるかなどを調査します。

つぎに事前調査をふまえて、作業計画を作成しましょう。

作業場所の状況に合わせて内容、手順、分担などを検討し、事前に作業計画を定めておくことで、気をつけなければいけないポイントを把握しやすくなります。

作業手順の確認とKY活動
安全に作業を行うためには、作業開始前に必ず作業手順の確認とKY活動を徹底しましょう。

KYとは「危険予知」の頭文字をとったものです。

まずは作業開始前に作業手順にそって「今日の作業ではどのような危険が起こりうるのか」を話し合いましょう。ここでは予測できる危険を全員で共有することが大切です。

それに基づき対策を立て、行動目標や安全のための指さし確認の内容を決めます。これを一人ひとりが実践することで、安全に作業を進められます。

墜落防止対策の徹底
樹の上など作業床が設置できないような場所で高所作業を行うときには、適切な墜落制止用器具を選んで装着し、正しい手順で使用することが大切です。

墜落制止用器具とは安全帯と呼ばれているもので、万が一墜落してしまったときに、作業者に加わる衝撃荷重を低減させ、身体を支える器具のこと。

厚生労働省は2019年に「フルハーネス型墜落制止用器具」へと名称を変更し、作業場での使用を原則とする規定を定めました。

造園業ではとくに高木の剪定時に安定した姿勢を確保できるように、胴ベルトを付属した「造園用フルハーネス型墜落制止用器具」が使われています。

フックがついた命綱(ランヤード)を接続するD環が背中、胸、腰回りの左右と前面の計5カ所に配置されており、さまざまな作業姿勢に対応できるので、足場が確保しにくい所でも安全に作業できます。

安全衛生教育の実施
事業者には労働者を新たに雇い入れたり、その作業内容を変更したりしたときに安全衛生教育を行う義務があります。

これは業種・職種・雇用形態などにかかわらないので、造園業へ転職する際も例外ではありません。

安全衛生教育では一般的に機械の使用方法や安全装置・保護具の取り扱い方、作業開始時の点検と作業手順、業務で発生するおそれのある疾病の原因と予防などについて学びます。

造園業ではとくに労働災害の発生要因で多い、高所作業での危険意識を共有することが大切です。

最近発生した墜落事故例を紹介

危険を予知して事故を防ぐためには、これまで実際にどんな事故がどのような状況で起こったのか知ることも有効でしょう。

日本造園連合組合が各地方労働局の公表データをもとにまとめた令和3年と4年の造園業関連労働災害死亡事例の中から、墜落事故例を紹介します。

法面での草刈り作業時における墜落
ダム放水路付近の法面で草刈り作業をしていた作業員が、放水路に墜落、沈んでいるのが発見されました。

法面下部から水面までの距離は3m、放水路の深さは2mでした。

法面のような地続きの場所でも、足場が悪ければ墜落事故は起こります。適切な安全対策を行い作業することが大切です。

グリーン用ローラー車からの墜落
ゴルフ場で芝生を転圧するためにローラー車で移動中、斜面で車が滑り横転、運転者は運転席から投げ出されて横転した車両の下敷きになりました。

高所作業での墜落ではなくても、二次災害から重大事故につながることがあるので注意しましょう。

移動式クレーンからの墜落
搭乗設備を設けた移動式クレーンを使用した伐採作業時に起きた事故です。

伐採した枝を下に落とさないためにロープをつけて作業していましたが、伐採された枝木が落下した反動で搭乗設備が揺れて作業者が搭乗設備から約7m下の地面に転落しました。

搭乗設備を使用していても、墜落制止用器具を併用するといった安全対策が必要でしょう。

まとめ

高木の剪定や伐採などで高所作業を行う造園業は常に、墜落の危険が伴います。

ですが安全衛生教育を受けて安全意識を高める、作業計画の策定やKY活動を行う、作業時には墜落制止用器具を装着するといった対策をとることで、安全に作業することが可能です。

危険予知と安全に関する正しい知識を身につけ、労働災害防止に努めていきましょう。