バイオフィリックデザインとは?導入事例や具体的手法も含めて紹介!

バイオフィリックデザインという言葉を耳にしたことがあるでしょうか。

建築家やさまざまな分野のデザイナーからも注目を集める、バイオフィリックデザインについて解説するとともに、造園業との関わりや導入事例を紹介します。

バイオフィリックデザインって何?造園とどうつながるの?

バイオフィリックデザインという言葉のもとになった「バイオフィリア(biophilia)」は、アメリカの生物学者エドワード・O・ウィルソンがつくりだした造語です。

生物や自然を意味する「バイオ」と、愛、友愛といった意味の「フィリア」を組み合わせていて、この言葉は「人間や動物は生来、自然を好む性質をもっている」「本能的に自然や生物とつながりをもちたいという欲求を備えている」といった理論を意味しています。

このバイオフィリア理論を取り入れたデザイン手法が、バイオフィリックデザインです。

バイオフィリックデザインを取り入れることで、ストレスが軽減され、リラックス効果や幸福感を得られる、といった効果が期待されています。

具体的には、屋内に自然を感じられる空間デザインをしたり、屋外の緑と内部空間をつなげ、風、光、水、土といった自然の現象や構成物を体感できたりするように、空間をデザインします。

そしてこの屋外の自然空間を主に担当しているのが、造園業です。

「造園」と聞くと、庭をつくったりその手入れをしたりしているイメージが強いですが、造園業の仕事はそれだけにとどまりません。

植物、石、水などさまざまな自然素材を用いて、都市空間に公園や緑地をつくり、美しく魅力的な都市景観を生み出したり、コミュニケーションの場を提供したりもしています。

都市空間に自然を取り込んでいるとも言えるでしょう。

造園業の仕事はまさに、バイオフィリックデザインを体現しているのです。

屋上庭園・壁面緑化など、造園でできる具体的なバイオフィリック手法

造園業の仕事は、住宅、マンションの庭、商業施設、テーマパーク、道路、公園など、さまざまな場所を対象として、新しい緑地空間を生み出したり、その維持管理を行ったりしています。

多種多様な空間づくりを手がける造園業ですが、そのなかでもとくに、明確にバイオフィリア理論を取り入れられているのが、屋上庭園や壁面緑化でしょう。

地面の上に植物を植えるのとは違い、屋上や壁面には土壌がなく、直射日光、強風、乾燥といった厳しい条件下で植物を育てていかなければなりません。

これらの条件をクリアし、自然を感じられる美しい空間を生み出し、維持していくためには、植物やそれに関連した専門的な知識が必要です。

植物を植え、育てる専門家でもある造園業では、今まで培ってきた専門知識や技術を活かして、屋上緑化や壁面緑化にバイオフィリックデザインを取り入れているのです。

造園業が実現するバイオフィリックデザインは、屋上緑化や壁面緑化だけではありません。

たとえば集合住宅やマンションの中庭、共用部分を緑化し、コミュニケーションやくつろぎの場を提供することで、日々の生活のなかでも、バイオフィリックデザインを感じられる空間を演出できます。

造園業の仕事のさまざまな場面で、バイオフィリックデザインが息づいていると言えるでしょう。

オフィスや商業施設での導入事例:造園で人の心と環境を豊かにする空間づくり

バイオフィリックデザインが私たちの暮らしや環境にどのように影響しているのか、具体的な事例からみていきましょう。

東京都台東区にあるシェアオフィス「花園アレイ」の屋上には、20種類を超えるさまざまなハーブに彩られたハーブガーデンがあります。

このハーブガーデンは、実際に植物と関わりをもつことで、そこで働く人たちの心理状態にどのような変化が見られるのか、調査・研究が行われています。

研究では、共用部分にあたるハーブガーデンでハーブを摘み取る、という体験を通じて、そこで働く人たちの心理状態が改善されていることが明らかにされました。

また東京都千代田区にあるBUSINESS HUB インキュベーションラウンジにも、バイオフィリックデザインが取り入れられていて
、導入事例の先駆けの1つです。

起業家支援や地方創生に関わる人材サービスを提供する会社のオフィスですが、オフィス内に植物が配置したり、自然の音を流したりすることで、ストレスが軽減されたという結果がでています。

実際に働く人からも、「仕事がしやすくなった」、「開放感がありながらもプライバシーが保護されている感じがする」といった声が上がっています。

大阪府大阪市にあるヤンマー株式会社本社ビル「YANMAR FLYING-Y BUILDING」もまた、バイオフィリックデザインを取り入れた好事例です。

このビルは2017年に、バイオフィリックデザインを取り入れた建築を表彰する「Biophilic Design Award」に入賞しました。

自然との共生をテーマに設計されていて、最上階では都市養蜂が行われていたり、エントランススペースにある大きな窓は、雨水を利用した水が流れ落ちるようになっていて、清らかな水音を楽しめるようになっていたりしています。

屋上庭園も設置されているほか、ビル壁面も緑化されています。

まとめ

バイオフィリックデザインとは、「人間や動物は生来、自然を好む性質をもっている」「本能的に自然や生物とつながりをもちたいという欲求を備えている」というバイオフィリア理論を取り入れたデザイン手法のことです。

自然や生命を感じられるようにデザインし、それによって幸福感を高めたりストレスの軽減をはかったりします。

植物を植えたりその維持管理をしたりして、都市空間のなかに緑地や公園といった自然空間をつくりだす造園業の仕事は、バイオフィリックデザインと関連性が高いものと言えるでしょう。