建設業界の定年退職は何歳?退職後の雇用はどうなる?制度の実情は?

建設業の定年退職は何歳?

高齢者の雇用に関する法律に、高年齢者雇用安定法があります。

高年齢者雇用安定法は、少子高齢化による人口減少の中、経済社会を維持するため、働きたい高齢者をはじめ、誰もが年齢に関係なく自らの能力を発揮し、活躍できる環境整備を図る法律です。

2013年の高年齢者雇用安定法の改正では、建設業を含め、60歳未満の定年は禁止されています。

また、高年齢者雇用安定法は、定年年齢の引き上げや定年制の廃止、継続雇用制度を導入するなどの方法で、65歳までの労働者の雇用確保を企業に義務づけていますが、2025年3月31日までは経過措置期間になっています。

2025年4月以降、企業は65歳までの労働者の雇用を必ず確保しなければなりません。

高年齢者雇用安定法は、2021年にも改正され、企業は65歳までの労働者の雇用確保が義務化される他、70歳までの労働者の就業機会を確保する努力義務が求められています。

労働者の就業機会を確保する具体的な措置は、70歳まで定年引き上げ、定年制の廃止、70歳までの継続雇用制度導入の他、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入、事業主が自社または委託で行う社会貢献事業に従事できる制度の導入です。

この改正により、建設業においても定年は65歳となり、企業によっては、希望する労働者は70歳まで働けるようになります。

定年後も職人として働ける?

建設業界では、定年後も職人として働くことが可能です。総務省統計局による調査結果では、建設業における就労者数は、55歳以上の年齢層が大きな割合を占め、業界の生産労働者の平均年齢は40歳を超えています。

建設業では65歳以上の高齢労働者の割合も高く、他の業界と比べても建設業は高齢化が進んでいる業界といえるでしょう。

建設業界は人手不足なので、定年を迎えた高齢の職人の雇用にも積極的な姿勢を見せています。高齢の職人は、人手不足の解消に寄与してくれるだけでなく、即戦力になる点でも魅力的です。

特に、建設業界が重宝する施工管理技士などの資格保有者は、年齢に関係なく活躍できるでしょう。施工管理技士の資格保有者の場合、現場経験を積んでいるほど高いスキルを期待できるので、定年後も職人として頼りにされます。

また、定年を迎えた高齢の職人は、若手の育成に寄与することも期待されています。建設業界は、若手を育成して定着を図り、高齢の職人にも長く働いてもらうことで業界の衰退を防げるでしょう。

定年後の再雇用はどのような業務になるの?

建設業では、定年後の再雇用において、定年前と同じ業務をしている人、もしくは定年前と業務内容は同じでも、責任を軽くしてもらって仕事をする人が多いようです。

しかし、建設業は危険な作業を伴うため、年齢と共に体力や判断力などが衰えた職人は怪我や事故が起きやすくなる懸念があります。

企業は、高齢労働者の事故や怪我を未然に防ぐため、安全面で配慮する必要があるでしょう。安全面での配慮の例として、高齢労働者の特性を考慮した作業を選んだり、体力や健康状況に見合った業務を任せたりするなどの取り組みが挙げられます。

また、企業に高齢労働者への理解や配慮を求めるだけでなく、高齢労働者自身も、高齢による体調の変化や身体機能の低下など、自分の状況を受け入れて仕事を選ぶべきでしょう。

高齢労働者によっては、体力の低下や職場環境の変化など様々な要因で、定年前と同じように働けないと自覚することもあるはずです。

例えば、仕事のデジタル化についていけない高齢労働者の場合、仕事に支障が出ることが予想されます。高齢による身体機能の衰えで、細かい図面が読みにくくなったり、物忘れが多くなったりして、トラブルが生じる場合もあるかもしれません。

定年後に再雇用された高齢労働者は、現役時代と同じ活躍ができない場合、自信を喪失したり、モチベーションが下がったりすることが懸念されるので、高齢労働者は自分の状態を見極めて仕事を選ぶのが理想的です。

まとめ

人手不足に悩む建設業界にとって、定年後の高齢労働者の労働力はとても貴重です。

高齢労働者を雇用することで、事故やケガの増加や若手の雇用枠減少などのデメリットを指摘する声があるのも事実です。ところが、建設会社の経営者・人事採用担当者を対象に行われたJAGフィールド株式会社の調査によると、約半数がシニア世代の「知識・経験が必要」と回答し、次いで「若い世代の従業員が少ないから」、「若い世代の従業員の育成・教育のため」と続きました。

参考:JAGフィールド株式会社
「高年齢者雇用安定法改正による影響と期待」に関する調査

このように、高齢労働者の持つ知識や経験が必要とされており、デメリット以上にメリットが大きく、シニア世代の能力は期待されているのです。

多くの企業や若手労働者が、高齢労働者の持つ知識や経験を必要としており、デメリット以上に高齢労働者の雇用はメリットが大きいのが現状です。

高年齢者雇用安定法をうけ、定年制の廃止や継続雇用制度を実施している企業は少なくありません。

また、建設業界では、定年後に同じ会社で働き続ける他、他社に転職して働くことも可能です。定年退職や早期退職した後に独立し、建設業で長年培ってきた知識や技術を活かして仕事をしている人もいます。

建設業界で独立する人は珍しくありませんが、独立した場合は定年の概念がなく、体力や気力が続く限り、いつまでも仕事を続けられるメリットがあります。

建設業で働く人は、高齢になっても仕事はあり、労働を希望するシニア世代は、様々な選択肢から働き方を選択できるでしょう。