賃上げ促進税制とは?
最近、ニュースや新聞などで耳にする機会が増えた「賃上げ促進税制」。
「従業員の賃上げや人材育成」に積極投資をした企業が税額控除を受けられる制度で、建築業・造園業も例にもれず適応がスタートされています。
賃上げ促進税制が進むと、企業で働く労働者にもメリットがいっぱい。今回は賃上げ促進税制の中身について詳しく紹介していきます。
賃上げ促進税制とはどんな制度?
賃上げ促進税制とは企業が従業員の給与を上げた際、その分を税額控除する制度です。
2013年度に「所得拡大促進税制」として導入されていたものの、当初は要件が厳しく、利用できる企業が限られていたのですが、さまざまな企業で利用できるようにと条件が緩和され、新たに「賃上げ促進税制」として再スタートされることになりました。
要件が緩和されたことで、企業の導入もスムーズになり、従業員の給与を上げるチャンスが広がりました。
従業員のメリット
賃上げ促進税制は従業員にとって多くのメリットをもたらします。まずこの税制により、従業員は給料やボーナスの増加が期待できるからです。
大企業と中小企業で適用要件は異なりますが、どちらも従業員に対する給与アップが条件になっています。従業員としては、これらの要件を満たす企業で働くことで、給料やボーナスが増額する可能性が高くなるでしょう。
さらに、この制度には「教育訓練費の上乗せ」も要件に入っています。教育訓練費の増加により、技術や知識を獲得する機会も増えるでしょう。
個人のスキル向上は、将来のキャリアや就職・転職の安定につながります。従業員にとっては経済的な面だけでなく、スキルの向上やキャリアアップの観点からも大きな利益をもたらす制度になるはずです。
一方で、造園業では「2024年問題」への対応も求められています。2024年問題とは、働き方改革の一環で導入された”ある規定”によって生じる問題のこと。
2024年4月以降、企業は時間外労働の上限を超えて従業員を働らかせた場合、厳しい罰則がくだることが決まっており、それによって生じるさまざまな課題を総じて「2024年問題」と呼んでいます。
時間外労働の上限制定で残業時間が減ること自体は良いことですが、それにより残業代が下がり、月収が下がることにもつながるため、賃上げ促進税制の導入は従業員にとっても恵みの雨といえるのではないでしょうか。
建設業や造園業への影響は?
制度が導入されたことをきっかけに、2022年春以降、建設業・造園業では多くの企業が賃上げを行う結果になりました。
特に注目すべきなのは、国土交通省からの通達により、公共工事の入札で、賃上げを実施した企業に加点ポイントが与えられたことです。公共工事の入札参加時に「賃上げ計画の表明書」の提出を行うことで、加点措置が講じられます。
国土交通省が採用する入札総合評価落札方式は、入札参加者を、入札額以外でも総合的に評価し加算ポイントの多い企業を優遇する方式です。
公共工事の入札総合評価落札方式では、「全40点満点中の3点分」が賃上げ導入による増加のため、企業にとっても公共工事の受注数を増やせるメリットが得られることになります。
これまで建設業・造園界では賃上げがなかなか進まない傾向にありました。しかし、政府の支援策と賃上げ促進税制の導入により、業界全体での賃上げ導入が増加しつつあり、今後は従業員の生活水準向上が大いに期待されています。
またこれにより建設業や造園業の魅力が高まることで、優秀な人材の獲得と育成が促進され、業界全体の競争力向上に寄与するでしょう。
出典:日経コンストラクション/大手建設会社の賃上げ状況アンケート
出典:国土交通省/「総合評価落札方式における賃上げを実施する企業に対する加点措置」に関するQ&A集
中小企業にも影響はある?
大手企業が積極的に賃上げに取り組む一方で、中小企業ではどうなっているのでしょうか。中小企業の場合、資金に余裕がないケースが多く、利益が出ていない場合は税額控除のメリットを十分に受けられません。
賃上げ促進税制は赤字企業には適用されないため、経済的に安定している中小企業でないと導入できないことが注意点として挙げられます。経済的に安定していなければ、賃上げ促進税制による従業員の給与アップは望めないでしょう。
ただしその場合、生産性の向上で利益率が改善されれば制度を活用できる可能性も高まります。例えば、デジタル化を推進する、高付加価値サービスの提供をするなどで効率は高められるので、諦めるのはまだ早いですよ。
今後中小企業でも賃上げの動きが促進される可能性は十分にあるでしょう。
まとめ
今回の記事では、賃上げ促進税制を解説しました。賃上げ促進税制は、企業が従業員の給与を増額し、その増額分を税額控除として利用できる制度です。
賃上げ促進税制の導入が進めば従業員にとっても給料やボーナスの増加が期待できるでしょう。
中小企業でも賃上げの動きが今後促進される可能性があり、働き手としては選択肢が広くなる可能性があるため、制度の状況をよく注視しておいてくださいね。