退職金とは?
退職金制度は、定年退職や自己都合退社などで社員が退職する際に、退職金が支給される制度です。退職金は、退職手当や退職慰労金と呼ばれることもあります。
企業の義務はある?
退職金を老後資金に充てる親世代を見ている現役の労働者の中には、会社を退職する際、当然会社から退職金が支給されると思っている人もいるかもしれません。
しかし、法律には企業が社員に退職金を支払わなければならないという規定はありません。退職金制度を導入するかどうかは、各企業が決めることです。
退職金制度を導入している会社の場合、就業規則に退職金の計算方法や支給対象者など退職金に関する規定があるはずです。退職金を受け取りたい人は就職や転職の際、会社の就業規則を確認するようにしましょう。
退職金制度は終身雇用制度の時代の名残で、現在では終身雇用制度が崩壊しつつあり、特に小規模な企業などでは退職金制度のない企業もあります。
厚生労働省の平成30年就労条件総合調査の結果によると、約20%の企業が退職金制度を導入していません。
建退共制度とは?
建設業における退職金制度として、建退共制度が有名です。
建退共制度の概要
建退共制度は、正式には建設業退職金共済制度といいます。建退共制度は、建設業に従事する労働者のために国がつくった退職金制度です。
建退共制度は国が創設した制度のため、確実に支給されますし、支給金額についても国が規定した基準が適用されるので安心感があります。
建退共制度の仕組みは、建設業に従事する労働者がどの現場で働いても、従事した期間分の掛け金が通算されて退職金の支給金額に反映されます。
建設業の労働者が他業種への転職や定年などで建設業から退く際、労働者に退職金が支給される仕組みです。もしも、労働者が在籍中の建設会社を辞職し、他の会社に転職したとしても、建設業に従事する限り、建退共制度の被共済者で居続けられます。
契約できる事業主
建退共制度の契約者となれるのは、建設業を営むすべての事業主です。建退共制度の契約者になる事業主は、企業規模、下請け、元請け、日本法人、外国法人などは問われません。
被共済者となれる従業員
建設業の現場で働く労働者のほとんどが建退共制度の被共済者の対象です。建設業の現場で働く労働者は、国籍、職種、給与体系、役職などに関係なく、誰でも建退共制度の被共済者になれます。
しかし、対象とならない条件に該当している人は、建退共制度の被共済者にはなれません。
被共済者の対象とならない条件は、事業主や役員報酬を受け取っている人および本社などで働く事務社員、すでに建退共の被共済者である労働者、中小企業退職金共済や特定業種退職金共済などの被共済者になっている労働者です。
ただ、すでに中小企業退職金共済や特定業種退職金共済の被共済者である人が転職によって建設業で働くようになった場合、今まで加入していた共済制度で納めた掛け金を引き継ぎ、建退共制度に移動できます。
退職金について
今後、建設業で働く予定のない建退共の被共済者は、退職金を請求できます。被共済者には、建設業退職金共済手帳が交付されており、労働日数に応じて手帳に共済証紙が添付されています。
退職金を支給してもらうには、手帳に添付された共済証紙が21日を1ヶ月と換算して合計12ヶ月分以上あることが条件です。請求事由発生年月日が平成28年3月31日以前なら、24ヶ月分以上となります。
建退共の被共済者である労働者の退職金について、12ヶ月以上24ヶ月未満の場合は、掛け金納付額の3割から5割が相場ですが、その後の退職金の額は、右肩上がりのカーブを描きます。建退共制度は、被共済者として、長い期間にわたって建設業に従事する人ほど有利だといえるでしょう。
加入へのメリット
建退共制度は、企業にも労働者にもメリットがあります。
まず、建退共は運用利回りが高い点です。運用利回りは改定されることがあり、最近では、令和3年10月に建退共制度の運用利回りは1.3%に改定されています。
建退共制度は、事業所の掛け金が非課税となる点も、個人事業主や法人企業にとってはメリットです。
また、企業は建退共制度に加入すると、国の補助が受けられます。令和3年10月以降、建退共への加入月から10ヶ月間は、国が総額16,000円を補助してくれます。
他にも、公共工事では、工事費に建退共の掛け金に相当する額が含まれており、国や自治体が建退共の費用を負担しています。公共工事を多く手掛ける企業は、建退共に加入するメリットが大きいといえるでしょう。
さらに、建退共に加入する企業は、公共工事の入札に参加するための経営事項審査で加点評価されます。
建設業に従事する労働者にとっての建退共制度のメリットは、退職金がきちんと支払われるという安心感の他、退職金には事実上税金がかからない点も魅力的でしょう。
メリットの多い建退共制度ですが、現状では、未加入の企業もあります。建設業で就職や転職を考える人は、退職金のことまで考え、建退共に加入している企業かどうかを確認することも必要でしょう。