「建設業界はパワハラなんて当たり前」とはもう言わせない!
近年、造園業は造園工事の建設業許可を得て、公園や緑地などの造園工事も多く手掛けています。
造園業は、建設業の一分野と見なされるため、植物を扱う建設業と言えるでしょう。
建設業界は多重下請構造となっており、造園業でも同様です。元請企業は、一部の仕事を下請企業に発注するのが一般的で、下請企業がさらなる下請けに仕事を依頼するケースもあるでしょう。このような多重下請構造により、元請企業は下請企業よりも優位な立場となります。
建設業界はパワハラが当たり前と言われていた理由
建設業界の下請企業がブラックと囁かれることは珍しくありません。下請企業は、元請企業の要求に応えるために、短い納期で仕事を請けて労働者を長時間働かせたり、利益が搾取されて低賃金であったりするなど、無理をする場合もあるからです。
しかし、建設業の下請企業内の労働環境や待遇などの悪さが問題であるだけでなく、パワハラもブラックと呼ばれる一因となっています。
多重下請構造となっている建設業界では、優位な立場の者が、その地位を利用し、劣位の者に精神的、肉体的に苦痛を与える可能性が十分に考えられます。これが建設業界はパワハラが当たり前と言われている要因です。
例えば、優位な立場にある元請企業の社員が下請企業の社員に対して暴言を吐いたり、下請企業の社員が孫請企業の社員に対して暴力をふるったりする行動は、パワハラと見なされる可能性が高いです。
パワハラ防止法で造園業はどう変わる?
通称パワハラ防止法は、正式には改正労働施策総合推進法という名称で、2019年5月に成立し、大企業では2020年6月から施行されています。中小企業においては、努力義務となっていましたが、2022年4月にパワハラ防止法が施行されています。
パワハラの定義
厚生労働省の定義するパワハラは、優位的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによって、労働者の就業環境が害されるものを指します。
パワハラ防止法について
パワハラ防止法によって、企業は、従業員がハラスメントの加害者や被害者にならないための措置を求められています。
具体的に、企業はパワハラ防止のための方針やパワハラ発覚時の処罰などを明確にし、従業員に周知したり、啓発したりしなければなりません。
また、パワハラ被害の相談ができる窓口の設置や相談体制の整備も求められるでしょう。相談体制の整備には、相談者やパワハラ加害者のプライバシーを保護したり、相談後にパワハラ被害者に不利益が生じたりしないように措置を講じ、従業員への周知や啓発も含みます。
従業員からパワハラの相談を受けた企業は、迅速に事実関係を確認し、被害者や行為者に対して適切な措置をとらなければなりません。また、企業は、パワハラの再発防止策も求められるでしょう。
パワハラ防止法による造園業における変化
パワハラは一つの企業内で起きるだけではありません。造園業を含む建設業は他の業種と違って、特殊な環境です。多重下請構造のため、雇用関係がない場合でもパワハラが起きる可能性があります。
パワハラ防止法によってパワハラ防止対策は強化され、企業は、自社社員と雇用関係のない他社社員との間でも、パワハラをしたり、パワハラを被ったりしないような配慮が求められるようになりました。
造園会社でパワハラが発生した場合の罰則は?
パワハラ防止法によって、企業はパワハラ対策を求められるようになりましたが、パワハラ防止法に罰則規定は設けられていません。
しかし、法には厚生労働大臣が必要と判断する場合、企業に対して助言、指導、または勧告できる旨が明記されています。従わない企業は、内容が公表されることになっているため、罰則はなくても、企業にとっては打撃が大きいでしょう。
造園会社でパワハラが発生した場合、企業は調査をして事実関係を確認した上で、被害者を救済し、加害者には処分を下します。
例えば、パワハラ被害者には配置転換を行ったり、心身の状態によっては休暇を与えたりします。パワハラ加害者に対しては、行為が悪質な場合、懲戒処分も考えられるでしょう。
もし、パワハラの加害者が元請企業の社員だった場合、下請企業は立場的に毅然とした対応が難しいかもしれませんが、適切な対応を怠ると被害者に損害賠償を請求される可能性があります。
また、下請企業の社員が孫請企業の社員などに対してパワハラの加害者となった場合、下請企業は法的責任を問われる可能性があるだけでなく、企業の信頼低下、取り引き停止や取り引き停止に伴う損害賠償請求などによって莫大な損失を被る可能性もあるでしょう。
パワハラ防止法は、下請けになることの多い中小企業が自社社員や孫請企業の社員を守るための法律でもあります。企業は、パワハラ対策を通して健全な職場環境を作ることで、生産性の向上や人材の定着などの効果も期待できるでしょう。