日本の空き家件数は増えている?
日本における空き家の件数は、年々増加しています。総務省の住宅・土地統計調査によると、1998年に576万戸だった空き家数は、2018年に1998年の1.5倍にあたる849万戸にまで増加しており、体感だけでなく、数字でも空き家件数の増加は明白です。
空き家の種類
空き家は4種類に分類されます。一つ目は、別荘やセカンドハウスなどたまに寝泊まりする人がいる二次的住宅です。二つ目は入居者待ちの賃貸用住宅、三つ目は売却用に空き家となっている住宅です。
その他に分類される四つ目は、二次的住宅、賃貸用や売却用住宅に該当しない住宅で、1998年からの20年で約1.9倍になっており、著しい増加傾向が見られます。
空き家が増える背景
日本では、少子高齢化が問題視されていますが、空き家にも高齢化の影響が及んでいます。高齢者が施設へ入居することで、住んでいた家が空き家となるケースが多いようです。
また、家の所有者が亡くなった後、相続人が家を放置することで空き家となる場合も珍しくありません。空家等対策特別措置法が施行される前は、建物を残す方が更地にするより税金上有利だった点も、空き家が増加する要因の一つになったと言えるでしょう。
空き家が増える問題点
空き家の中でも、その他に分類される空き家の増加は、様々な問題点をはらんでいます。
空き家は、周辺の住環境に大きな影響を及ぼすことが懸念されますが、所有者以外の人が所有者に無断で空き家の敷地に立ち入ったり、空き家の草木を切ったりすることは不法行為になりえます。
空き地を放置することで、空き家所有者と近隣住民とのトラブルに発展する可能性があります。
庭の草木による害獣害虫問題
適切な手入れがされていない庭の草木は、害獣害虫の発生源となります。蜂や毛虫など人間に害を及ぼす虫が増加すると、近隣住民に被害が出ることもあるでしょう。
また、放置された空き家は猫や鼠の住み処となりやすく、害獣のいる不衛生な環境はハエやゴキブリなどの害虫も発生しやすくなります。
庭木の越境
庭木は生きているので、手入れされないまま伸び放題となれば、敷地の境界を越えるのは時間の問題です。葉が茂った庭木は、景観を悪くするだけでなく、隣家の日当たりを遮ったり、隣家の壁や窓に接触して傷をつけたりするなどのトラブル源となる可能性があります。
さらに、秋冬には大量の落葉で近隣住民を困らせるでしょう。
庭木が電柱に干渉
庭木が電柱や電線に接触する状態が続けば、電線が擦り減って切れることがあります。その際に、漏電や火災などの危険性が憂慮されるため、一刻も早い対処が求められます。空き家で火災が起こった場合、近隣住民への被害は計り知れません。
造園業と空き家の関係性
増え続ける空き家対策をするため、平成27年に空家等対策特別措置法が施行されました。
空家等対策特別措置法
空家等対策特別措置法は、空き家の放置によって起こる問題を解決し、家の再利用や処分を目的とした法律です。
空家等対策特別措置法の施行により、行政は空き家の実態調査をし、特定空き家に認定した空き家の所有者に対し、除却、修繕、立木竹を伐採する等の措置の助言又は指導、勧告、命令が可能になっています。さらに、要件が明確化された行政代執行の方法により強制執行も可能です。
特定空き家とは、倒壊の危険性がある家、衛生状態が悪い家、景観を損なう家、周辺の生活環境を乱す家などが対象になります。
特定空き家に認定された空き家の所有者は、行政から指導や助言を受けますが、問題点が改善しない場合、行政より勧告が出され、固定資産税の特例措置が解除となり、税負担の増加は免れません。
勧告でも状態が改善されない特定空き家は、自治体から改善の命令が出され、適切な処置をしない所有者には罰金が科されます。最終的に、特定空き家には行政代執行の可能性がありますが、費用は空き家所有者が負担しなければなりません。
空き家の所有者は、特定空き家にならないよう空き家の管理をする必要があるため、造園業と空き家の関係性は、今後より深まるでしょう。
全国造園業・空き家問題対策協会
造園業には、空き家の庭木を手入れする依頼もあり、平成27年には全国造園業・空き家問題対策協会が発足しています。
全国造園業・空き家問題対策協会は、造園業の立場から空き家問題の解決に取り組んでおり、依頼を受けた協会員の造園会社が空き家の庭木の剪定、伐採、消毒などを行います。
まとめ
誰もが空き家の所有者になったり、空き家に悩まされたりする可能性があるため、空き家問題は決して他人事ではありません。
また、空き家問題は、地方だけの話と思われがちですが、都会でも起こっている問題です。
空き家に関する問題は既に多く発生していますが、空家等対策特別措置法が施行され、現状では空き家の所有者は、空き家を放置するわけにはいかなくなっています。
空き家の所有者は、空き家のリスクを把握すると共に法律について勉強し、空き家の管理方法を一考する必要があるでしょう。自治体によっては空き家に関連する補助制度を用意している場合もあります。
空き家問題がある限り、今後も造園業の需要は高いでしょう。