経営事項審査(経審)の審査基準が改正され、2021年4月から1級技士補が経営事項審査の加点対象になりました。これは、技士補を取得するメリットにもなるでしょう。
今回は、経営事項審査において技士補の加点点数について解説します。
経営事項審査とは
経営事項審査は、公共工事の入札に参加を希望する建設企業が受けなければならない審査です。
工事の発注者は、入札に参加する建設企業の資格審査を行う際、客観的事項と主観的事項の評価を点数化して建設企業の順位付けを行いますが、経営事項審査は客観的事項に当たります。
経営事項審査は、経営状況、経営規模、技術力、その他審査項目(社会性等)の4項目があり、それぞれの点数を規定の計算方法にあてはめて総合評定値を算出します。
1級技士補と2級技士補の加点
1級技士補を雇用する建設企業は、経営事項審査の技術力の項目において、技術者一人当たり4点を加点できるようになりました。
また、2級技士補は加点対象にはなりませんが、2級技士補が取得したCPD単位は、2021年の経審改正により評価対象となっています。
CPDとは、施工管理技士や技士補など技術者を対象にした継続教育制度です。技術者は、講習やセミナーなどを受講し、自己研鑽を図ることでCPD単位を与えられます。
建設企業は、施工管理技士や1級技士補だけでなく、2級技士補も含めた技術者が取得したCPD単位数に応じ、経営事項審査のその他審査項目(社会性等)に加点できます。
その他審査項目(社会性等)の中の知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況という項目に最大で14点の加点が可能です。
経営事項審査の加点対象になる技士補の種類は?
経営事項審査の加点対象になる技士補の種類は、1級技士補です。
1級技士補は、第一次検定と第二次検定のある1級施工管理技術検定において、第一次検定の合格者に与えられる称号です。
1級技士補に加えて必要な条件
1級技士補に加えて、主任技術者の要件も満たす必要があります。
主任技術者になるには、資格要件を満たすか、学歴や実務経験に基づく要件を満たさなければなりません。
2020年に施行された改正建設業法で、監理技術者補佐制度が創設され、主任技術者と1級技士補の資格保有者は、監理技術者補佐として現場に専任させることで、監理技術者が複数の現場を兼任できるようになっています。
経営事項審査では主任技術者も加点対象で、最大で3点の加点があります。監理技術者補佐として仕事ができる1級技士補には、主任技術者の加点よりも高い点数である4点の加点が割り当てられています。
2級技士補が加点されない理由
経営事項審査において直接的に加点対象とならない2級技士補は、2級施工管理技術検定の第一次検定に合格することで取得できます。
2級技士補は17歳以上であれば誰でも受検でき、高校に在学中の生徒でも合格が可能です。
しかし、2級施工管理技術検定の第一次検定は、実務経験が求められない試験ということもあり、資格を取得しても建設業法上の技術者として現場に配置するわけにはいかないため、経営事項審査でも加点対象から外れています。
経営事項審査に加点されるということはどういうこと?
経営事項審査には、総合評定値という各項目の点数を総合的に評価した点数が設けられています。この評定値と発注者別の評価点を加算し、建設企業をランク付けすることができます。
建設企業は、ランクに応じて受注できる金額の範囲が決まっており、ランキングが上がるほど大きな工事の受注が可能となるため、大規模な公共工事を受注したい建設企業は経営事項審査の点数を上げることが求められます。
建設企業は、経営事項審査の結果を見て、他社分析をしたり、自社を客観的に把握したりして、総合評定値を上げるための努力や工夫をしているでしょう。
技士補の経営事項審査への加点は、大きな工事を受注したい建設企業にとって朗報です。1級技士補を加点対象とするには、主任技術者の要件を満たしていることや6ヶ月を超える恒常的な雇用関係が必要なため、1級技士補を擁している建設企業は加点できるように備えましょう。
また、CPD単位の経営事項審査の加点について、評価されるのは、経営事項審査の審査日前の1年間において、2級技士補を含めた技術者が取得したCPD単位の平均値となります。
CPD単位で加点措置を受けたい企業は、新入社員であっても、2級技士補の資格保有者にCPD単位を取得するよう促す必要があるでしょう。尚、技術者一人当たり、1年間に取得できる上限単位数は30になっています。
まとめ
2021年4月から、技士補が経営事項審査の加点対象になっています。
建設企業は、経営事項審査の点数を上げる対策として、労働者に評価対象となる資格を取得するよう促したり、資格保有者を雇用したりする方法があります。
また、働きながら資格を取得するのは非常に大変なことです。そのため、会社全体で社員の資格取得を支えられるような仕組みを作る必要があるでしょう。
そして、建設業で経営事項審査の総合評定値を上げたい企業がまず注目すべきなのは、経営事項審査のその他審査項目(社会性等)です。
CPD単位数の加点も可能なその他審査項目(社会性等)は、きちんとポイントを押さえれば、大幅な点数アップが期待できます。
ただ、経営事項審査は、各審査項目の点数の計算方法や総合評定値の算出方法が複雑で、建設業でも各会社の状況によって加点できる要素が異なるため、注意しましょう。