造園業の若者離れの原因は3K?人手不足になる原因や対策も紹介!

造園業の若者離れの原因である3Kとは?

「3K」とは「危険」「汚い」「きつい」の頭文字をとったもの。このような職種や職場に対して使われる言葉です。

バブル期に販売業やマスコミなど華やかな業界に注目が集まる中、建設・土木業、清掃業などの肉体労働中心の職種や、警察官、介護・看護など労働条件が厳しい職種が敬遠され「3K」と言われるようになりました。

はしごや樹の上などの高所作業(危険)、土やモルタル・コンクリートなどで汚れが付く作業(汚い)、炎天下や寒風の中での作業(きつい)。

屋外での肉体労働が中心の造園業も、この「3K」職種に該当すると言われています。

造園業の若者離れの現状

令和2年国勢調査の職業別・年齢別の就業者数を見てみると、造園業の若者離れの現状がわかります。

出典:令和2年国勢調査 抽出詳細集計
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003464389

「植木職・造園師」分類されている人のうち、29歳以下の割合はわずか6.5%、39歳以下まで含めても、17.6%と全体の5分の1にも達しません。

それに対して、65歳以上の高齢者は38%と高い割合を占めています。造園業の若者離れは、かなり深刻な状況と言えるでしょう。

造園業で若者離れする理由

造園業で深刻化する若者離れは、年収が低い、労働時間が長く休日が少ない、収入が安定しないなどが理由です。

年収が低い
他業種に比べて年収が低く、労働に見合った給与がもらえない、と感じてしまうことが、若者離れの理由の一つです。

厚生労働省が令和4年賃金構造基本統計調査をもとに算出した、造園業に従事する人の全国平均年収は、およそ363万円です。

出典:職業情報提供サイトjobtag 造園工
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/222

大工の平均年収が407万円で建設・土木作業員が417万円、施設介護員が363万円、看護師が508万円です。

他の3Kと言われる職種と比べてみても、造園業の平均年収は比較的低いと言えるでしょう。

労働時間が長く休日が少ない
他業種に比べて労働時間が長く、休日が少ないことも、造園業の若者離れの一因です。

令和3年度に厚生労働省が、日本造園組合連合会、日本造園建設業協会などに対して行った「働き方改革における週休2日制、専門工事業の適正な評価に関する調査」を見ると、造園業で週休2日制を導入している企業の割合は23.9%です。

このうち、実際に週に2日休めている割合は10.4%とさらに低い割合に。反対に休日出勤をしている割合は53.7%と半数以上を占めています。

出典:令和3年度働き方改革における週休二日制、専門工事業の適正な評価に関する調査結果
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000992617.pdf

また、厚生労働省が行っている毎月の勤労統計調査・令和5年度4月分を見てみると、全職種平均の月間実労働時間は、141時間です。

出典:毎月勤労統計調査 令和5年4月分結果速報
https://www.mhlw.go.jp/

令和4年賃金構造基本統計調査によれば、造園業に従事する人の1ヶ月の平均労働時間は169時間なので、これよりも30時間近く多い結果です。

出典:令和4年賃金構造基本統計調査(https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/222

週休2日制を取り入れている会社が少なく、長時間労働が常態化している現状が、若者離れに拍車をかけていると言えるでしょう。

収入が安定しない
造園業を営む事業者は中小企業が中心。就業形態も正社員は半数以下で、個人経営やフリーランスが多いのが特徴です。

個人邸宅の剪定を仕事の中心にしている小規模な造園業の会社では、現在でも日給制をとっている場合が多くあります。

造園業は屋外作業が中心のため、天候に左右されやすい仕事。天候が悪い日が続いてしまうと給与が減少する可能性が高く、安定した収入を望めないため、若者離れがすすんでいます。

造園業の若者離れを防ぐための対策

国土交通省では、造園業を含めた建設現場で働く人々の誇りや魅力、やりがいの向上を図るための取り組みや施策の展開をすすめています。

その中で国土交通省が提唱する、「給与」「休暇」「希望」の「新3K」を実現するために、国土交通省直轄工事において各種モデル工事などの取り組みを実施。

造園業の若者離れを防ぐ対策としても、この「新3K」が有効です。

賃金・待遇の見直し
賃金や待遇を見直すためには、その引き上げ分の原資を確保する必要があります。

前述した国土交通省直轄工事では、下請け企業からの労務費見積もりを尊重する企業を評価する取り組みを推進。

適正な見積もりをもとにした取り引きを行うことで、原資を確保していきましょう。

また直接的な賃金の見直しも重要ですが、「労力に見合った給与」を実現するためには、業務を効率化し、余計な労力を減らすことも大切です。

デジタル化を推進する、一部の業務にテレワークの導入するなど、さまざまな手法で業務を効率化するといいでしょう。

休暇・労働時間の見直し
2024年4月から、造園業を含めた建設業に対しても「罰則付き時間外労働上限規制」が適用されます。

長時間労働を是正と週休2日制を導入して労働環境を改善することは、急務と言えるでしょう。

週休2日制を取り入れるためには、適正な工期をすることがポイントです。

準備や後片付けを含めた工期設定をする、休日や天候を考慮して余裕をもった工期設定をするなどの工夫が必要です。

造園業のイメージアップ図る
いわゆる「3K」のイメージを払拭し、造園業の仕事に希望を見いだしてもらうためには、造園業のイメージアップを図ることが重要です。

日本造園建築業協会では、マスコミへの積極的な情報提供や、民間企業との事業推進、植栽指導やガーデニング教室などの市民サービスなどを通じて、「造園建築業は緑の景観・環境の創造事業である」ことをPR。

業界全体のイメージアップを推進しています。

独自のブランディング戦略として、修行中の従業員が剪定を行う「お庭のカットモデル」というサービスを展開する会社も登場。

見習い期間でも仕事にやりがいを見いだし、独立の後押しにもなるため、造園業に「希望」をもてる事業と言えるでしょう。

まとめ

造園業における若者離れ、人手不足の問題は深刻です。

働き方改革やデジタル化を推進し、賃金や待遇の改善、労働時間や休暇制度を見直すことで「3K」のイメージを払拭し、造園業の若者離れを食い止めていきましょう。