造園業界の現状|固定客を多く作る方法を徹底解説

造園業界の現状

昨今の日本では、東日本大震災や熊本地震などの地震災害、台風に伴う洪水や土砂災害など、毎年多くの自然災害が発生しています。

また近年、働き方改革関連法が順次適用されるなど、働く人それぞれの事情に応じた、多様な働き方への関心が高まりつつある状況です。

めまぐるしく変化する現代社会において、造園業界でも自然災害に備えた防災・減災対策や働き方改革への注目が集まっています。

大規模自然災害に備えた防災・減災対策
造園業界では近年増加している地震や台風、ゲリラ豪雨など、多様化する大規模自然災害への防災・減災対策が求められています。

公園や緑地などは、大規模災害時の避難地や防災拠点として利用されています。

備蓄倉庫や耐震性の貯水槽、放送施設や情報通信施設、ヘリポート、延焼防止のための散水施設などを備えた、防災公園の整備も、今後ますます進んでいくでしょう。

個人住宅の造園でも、火災の延焼を防ぐ役割がある防火樹を生け垣として植えたり、雨水タンクを設置して災害時に利用できるようにしたりするなど、防災・減災対策を含めた提案をしていくことが大切です。

また阪神淡路大震災では、多くのブロック塀が倒壊し、甚大な被害をもたらしています。

基準に適合したブロック塀を作ることや、被害の少ないフェンスや生け垣を提案することも、今後ますます重要になっていくでしょう。

働き方改革
高齢化や人手不足が続いている造園業界において、働き方改革を進めることは急務の課題です。

厚生労働省が令和4年賃金構造基本統計調査の結果から算出したデータによると、造園業に就いている人の労働時間は、1ヶ月あたり169時間と、他業種に比べて長い傾向にあります。

出典:職業情報提供サイト 造園工
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/222

造園業を含めた建設業では、2025年4月1日から、「原則として月に45時間、年間で360時間」という時間外労働の上限規制が適用されます。

出典:厚生労働省 時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務
https://www.mhlw.go.jp/

労働時間や休日の取得状況を見直して労働環境を改善することは、人手不足解消にもつながります。

このほかにも、IT化をすすめる、教育訓練に力を入れる、作業環境を改善するなど、多方面から働き方改革を推進していくことも必要です。

造園工事の市場動向

2013年度には98万戸だった新設住宅着工戸数は、2018年には95万戸、2022年には85万戸と年々減少傾向にあります。

出典:建築着工統計調査(住宅着工統計)
https://www.e-stat.go.jp/

住宅着工件数が減少すれば、個人住宅を対象とした庭の手入れの仕事も減少することは避けられません。

また、国土交通省による建設業許可業者数調査によれば、2023年度、造園業の建設業許可を取得している企業数は24574社で、前年の1%にあたる250社、減少しています。過去10年分の許可数をみても、全体的に減少傾向にあります。

出典:建設業許可業者数調査の結果について -建設業許可業者の現況(令和5年3月末現在)-
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001610921.pdf

さらに、国土交通省がおこなっている「建設工事施工統計調査」によると、平成27年度の造園工事業における完成工事高は4590億円でしたが、令和3年度は4173億円と減少しています。

出典:建設工事施工統計調査報告 令和3年度実績・平成28年度実績
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001597513.pdf
https://www.mlit.go.jp/common/001227403.pdf

これらの調査の結果をふまえると、造園工事の市場は、全体的に縮小傾向にあると言えるでしょう。

造園業界の今後対応すべきこと

前述したように、造園業界の市場は縮小傾向にあります。

造園業を取り巻く厳しい状況の中で継続して仕事を続けていくためには、固定客を確保することや、造園業のみにとらわれない広い視野を持つことなどが必要です。

固定客を多く作る
個人住宅の新築着工棟数が減少すると、造園業の新規顧客の絶対数も減るため、新しい仕事を獲得する機会も減少します。

そのため、一度仕事をした顧客にリピーターとなってもらい、継続して仕事を受注することが、より重要となるでしょう。多くの固定客を作ることは、長期的で安定した売り上げにつながります。

固定客を増やすためは、定期的な連絡や顧客の要望に合ったタイミングや内容の提案が大切です。作業完了後に顧客の感想を聞き、満足度を把握するのも良いでしょう。

こまめに連絡をしたり情報発信したりすることで、顧客のニーズを把握し、固定客獲得につなげていきましょう。

自分のことを植木屋・造園業と判断しない
縮小していく市場に対応していくためには、今までの仕事内容に固執せずに、仕事の幅を広げていくことも大切です。

植木屋や造園業と言うと、庭に木を植えたり、せん定などの手入れをしたりするイメージが強く、「庭」のみに視点を向きがちです。

しかし、多くの庭は単体で存在しているわけではなく、住宅と共にあります。

庭だけではなく住宅、さらにその先の周囲の環境などへまで視野を広げてみれば、暮らし方の提案や、街づくり、景観デザインなど、仕事の範囲も広がります。

実際に、庭のデザインの仕事から住宅の設計へと範囲を広げ、住宅と庭を1つの空間としてデザインしている造園業の会社もあります。

また造園業の範囲は個人住宅の庭だけではなく、公園や緑地を作ることや、建物の屋上や壁面を緑化することも含まれます。

環境問題などへの意識が高まる中、公園や街路樹の整備や都市の緑化など、生活を豊かにする公共事業の発注は今後も継続的にされていくと考えられます。

建設業許可の取得や国家資格の取得など、公共事業を受注できる体制を整えておくことも有効でしょう。

まとめ

近年増加している大規模な自然災害への防災・減災対策は、造園業界でもしっかりと考えていかなければならない事柄です。

2025年から造園業でも時間外労働の上限規制が適用されるため、長時間労働などの問題を抱える造園業界では、働き方改革を推進することは急務と言えるでしょう。

また、縮小傾向にある造園業の市場において、継続的に仕事を獲得していくためには、固定客を増やしたり、従来の造園業の仕事にとらわれずに、広い視野で取り組んだりしていくことが大切です。