造園設計の仕事内容
造園設計とは工事をするためにさまざまな検討をして計画を立てることです。
まずは顧客の要望を聞き出すことと、周辺の状況や既存物の有無などを確認する現地調査を行います。
次にこれらの結果をふまえて実際の設計業務に入ります。
土地の形状を変更する必要があるのか、何で舗装するのか、どんな種類の植物を植えるのかなど、細かい部分まで検討しなければなりません。
設置するものによっては構造上問題がないかを確認することも必要です。
計画ができたら図面を作成します。顧客とイメージを共有しやすいよう、立体的なイメージを作成したり、スケッチを描いたりすることもあります。
最後に行うのが見積もりの作成です。顧客の要望に応えるためには予算に合った設計をしなければならないため、造園設計では材料や工事費に関する知識も必要でしょう。
造園設計の事例
「造園」と言うと、木を植えたり石を設置したりして「庭」をつくるイメージが強いかもしれませんが、テーマパークの植栽計画や公園、緑地の設計、建物の屋上・壁面の緑化なども造園の1種です。
さまざまな種類がある造園設計の詳しい仕事内容を、事例を交えながらご紹介します。
テーマパーク・商業施設
テーマパークや商業施設の緑地・植栽計画も造園設計の仕事です。
テーマパークの造園設計では、コンセプトやテーマを適切に表現しなければなりません。美しい状態を維持するために、植物の生長による変化を見据えたデザインをすることも必要でしょう。
イオンモール上尾につくられたAGEO PARKは、広い芝生広場を中心に、子ども用のアスレチック遊具やテラス席などを設けられ、利用者が気軽に立ち寄れるよう設計されています。
また東京ガーデンテラス紀尾井町のクリスマスツリー設置や、富士芝桜まつりの植え込みデザインなど、イベントの植栽計画も造園設計の仕事の1つです。
テーマパーク・商業施設の造園設計は、その場の用途やテーマに合わせた設計をすることが重要だと言えるでしょう。
公園・緑地
公園や緑地をつくる仕事も造園設計の仕事です。
公園にはさまざまな種類があり、その規模や目的に応じて設計することが大切です。
仙台市の青葉山公園や東京都の漱石公園のように、歴史的・文化的な背景を表現することを求められることもあるでしょう。
水元公園や国営ひたち海浜公園のような大規模な公園では、周辺の景色を活かしたデザインや、在来生物の保護や元の地形を活かすなど自然環境に配慮した設計に重点がおかれることもあります。
また街中の緑道や緑地のデザインも、造園設計の仕事です。
現在、再整備計画が進められている玉川上水旧水路緑道では、地域住民との意見交換会の結果をもとに、自然環境と一体になれる遊び場や農園の設置などが検討されています。
公園や緑地の設計では、デザイン性、利便性、快適性、安全性に加えて、周辺環境への配慮や利用者・地域住民の要望など、さまざまな条件を検討することが大切でしょう。
屋上・壁面緑化
商業施設、ビル、学校などの屋上・壁面を緑化するのも造園設計の仕事です。
伊勢丹本店の屋上庭園はサクラやモミジなど四季を感じられるさまざまな雑木が植えられていて、利用者の憩いの場になっています。
また客室やレストランからも眺められるホテルニューオータニ本館の屋上庭園は、印象的なデザインで利用者の目を楽しませています。
屋上・壁面緑化の設計を行うときには、高いデザイン性も求められると言えるでしょう。
また屋上・壁面緑化では通常とは異なる気象条件で植物を育てなければならないため、植物全般に対する深い知識が必要です。建物への荷重、構造、防水などにも注意しなければなりません。
大阪梅田ツインタワーズ・サウスの壁面緑化のように、メンテナンス方法や維持管理システムを合わせて提案することもあります。
屋上・壁面緑化の造園設計ではデザイン性に加え、植物から建物の構造、メンテナンス方法まで、さまざまな分野の知識が必要になるでしょう。
宿泊施設の庭園・植栽計画
造園設計ではホテルや旅館などの宿泊施設の庭園設計や周囲の植栽計画も行います。
宿泊施設の造園設計では、滞在客をもてなし、心地よさを感じてもらえる空間が求められます。その土地らしさを表現することも必要でしょう。
ホテル ザ セレスティン 京都祇園の庭は、京都ならではの豊かな自然を身近に感じられる設計です。「大地」「山中」「湖辺」「湖底」「古代」の5つのテーマに分けられた7つの庭を巡ることで、祇園の原風景を辿るような体験ができます。
長野県にある温泉旅館・金宇館の庭園は建物を取り囲むように配置されていて、外の喧騒を忘れてゆったりとした時間が過ごせるよう工夫されています。お湯が流れ落ちて湯気がのぼる滝からは、温泉場らしい情緒を感じられるでしょう。
建物や周囲と調和したくつろぎの空間を演出することが、宿泊施設の造園設計では大切だと言えます。
/住宅の庭・外構
個人住宅や集合住宅の庭、外構の計画をすることも造園設計の仕事です。
個人住宅の造園設計は、顧客の要望や敷地条件をもとに、周囲の環境を考慮しながら行います。建物との一体感も大切でしょう。
住む人のライフスタイルに合わせ、使い勝手やメンテナンスのしやすさを考えることも必要です。
大規模な分譲地では、街全体のデザインを統一するために、建物や造園のデザインに対して一定のルールを設けている場合があるので注意しなければなりません。
住宅の造園設計では、住む人に寄り添い、周辺との調和がとれたデザインが重要なのです。
まとめ
造園設計は顧客の要望や現地調査の結果をふまえて、計画をたてて図面と見積もりをつくることが主な仕事です。
造園工事の範囲は、住宅の庭に限らず、テーマパークや商業施設、公園・緑地、屋上・壁面緑化、宿泊施設と多岐にわたります。
街で見られるさまざまな「緑のある空間」の多くに、造園設計が関わっていると言えるでしょう。