
造園業界は現在、労働力不足の深刻な課題に直面する一方で、環境意識の高まりや都市化の進展により新たな成長機会も見出しています。高齢化の進行で経験豊富な職人が退職する中、若手の参入は限定的で、業界全体が人手不足を感じている状況です。
本記事では造園業界の現状における人材不足の実態と収益構造の変化、そして今後の展望について解説します。
また公共事業の安定性やIT技術による効率化の可能性についても解説していますので、10年後の造園業界はどうなっているか気になっている方は参考にしてみてください。
造園業界の現状

現代の造園業界はさまざまな課題に直面しています。特に深刻な人材不足の問題が業界全体に影響を与える一方で、収益面では比較的安定した状況が続いている状況が見られます。
以下では、造園業界の現状について詳しく解説をしますので、参考にしてみてください。
人材不足が深刻化
造園業界は現在、構造的な変化の波に直面しており、特に労働力をめぐる深刻な問題が表面化しています。高齢化の進行により経験豊富な職人の退職が相次ぐ中、若い世代の参入は限定的で、業界全体の人材確保が困難な状況です。
帝国データバンクの調査データでは建設関連業界の約7割が人手不足を訴えており、55歳以上のベテラン層が全体の約4割を占める一方、29歳以下の若手は1割程度にとどまっています。
年齢構成の偏りは他産業と比較しても顕著で、技術継承や事業継続の観点から大きな懸念材料となっているのが現状です。持続可能な業界発展のためには、若年層の積極的な採用と職場定着を促進し、円滑な世代交代を実現することが求められています。
出典:帝国データバンク/人手不足に対する企業の動向調査(2025年4月)
業界全体の収益に変化はない
造園業界の収益構造は過去20年間で大きな変動を経験し、現在は安定化の傾向を示しています。
国土交通省の統計データによると、造園工事業の完成工事高は平成15年の8,272億円から平成23年には4,131億円まで半減し、業界にとって非常に厳しい状況が続きました。
一方で、平成24年以降の傾向を見ると、完成工事高は微増減を繰り返しながらも大幅な落ち込みは見られず、底打ち感が出てきています。
現在の収益の安定化は、民間需要の回復や環境意識の高まりによる緑化需要の増加などが背景にあると考えられ、業界として一定の基盤を維持できている状況を表しています。
造園業界の今後

造園業界は現在の課題を抱えながらも、将来に向けて明るい展望を持っています。社会インフラとしての緑地整備や環境保全への関心の高まりにより、造園工事の需要基盤は堅調に維持されると予想されます。
また、国や自治体による公共事業の継続的な発注により安定した収益源が確保される見通しです。さらに、デジタル技術の導入や作業の効率化が急速に進展しており、技術革新が労働力不足を補完する重要な役割を果たすと期待されています。
以降より、造園業界の今後について詳しく解説します。
仕事自体は無くならない
造園業界は現在の課題を抱えながらも、将来に向けて安定した基盤を維持できる環境にあります。特に大手造園会社は長年培ってきた実績と信頼により、持続的な事業展開が可能な状況です。
これらの企業は大手ゼネコンや建設会社との強固な取引関係を築いており、継続的な受注機会を確保しています。また、高い知名度と豊富な施工実績により顧客からの厚い信頼を獲得しており、競争優位性を保持しています。
公共事業が安定
造園業界における公共事業は、現代社会の環境課題に対応する役割も担っており、将来にわたって安定した需要基盤を形成しています。
公園整備や緑地帯の設置、街路樹の維持管理、公共施設の緑化工事など、造園業が手がける公共事業は多岐にわたります。
急速な都市化が進む中で、高層ビルやインフラ建設が増加する一方、自然環境の喪失が深刻な社会問題となっており、緑地の価値はこれまで以上に注目されているのが現状です。
緑地は都市部のヒートアイランド現象を緩和し、大気浄化機能を持つなど、環境保全において欠かせません。
このような背景から、造園工事は都市開発と環境保護を両立させる重要な手段として位置づけられ、継続的な公共投資により安定した事業機会が確保される見通しです。
IT化が進み人手不足をカバー
造園業界では深刻な人材不足への対応策として、デジタル技術の導入が急速に進展しており、業界の労働環境を根本的に変革する可能性を秘めています。
AIやIoT、ロボット技術といった先端技術の活用により、従来の手作業中心の業務体系から効率的な作業プロセスへの転換が図られているのが現状です。
特にドローンを活用した地形測量や3D設計ソフトの導入により、設計から施工に至るまでの工程が短縮され、作業精度の向上も実現されています。
ITの技術革新は品質の標準化や安全性の向上にも関連し、限られた人材でもより高度な成果を生み出すことを可能にしています。
まとめ

本記事では造園業界の現状と今後の展望について解説しました。現在の造園業界は深刻な人材不足に直面しており、高齢化の進行により約7割の企業が人手不足を感じている状況です。
一方で、業界全体の収益は平成24年以降安定化の傾向を示しています。将来に向けては、企業規模による安定性の差はあるものの、大手企業を中心に継続的な事業展開が期待されます。
今後について、公共事業やIT化の観点からも解説していますので、10年後の造園業界が気になっている方は参考にしてみてください。