特殊緑化とは?これから需要が高まる技術を理解しよう

特殊緑化とは

特殊緑化とは、建物の屋上や壁面などの特殊空間を緑化することです。

自然豊かな田舎とは異なり、都市部は自然環境に恵まれているとはいえません。都市部は、生活が便利ではありますが、密集して建てられた高層のコンクリート造りの建築物や人工排熱などの影響によるヒートアイランド現象で、他地域よりも平均気温が高い傾向にあります。

また、全国的に猛暑日や豪雨の増加をはじめとした地球温暖化の影響も顕著で、官民問わず、喫緊の対策が求められています。

ヒートアイランド現象や地球温暖化の対策として、特殊緑化は効果があるといえます。

都市部は自然が多くありませんが、そもそも植物が育つ環境が整っていません。特殊緑化技術は、緑化が困難な特殊空間を緑化し、緑豊かな都市環境の創造を可能にします。

特殊緑化は、環境保全や防災に効果的であるだけでなく、人々の心にも潤いや安らぎを与えてくれるでしょう。

特殊緑化の種類と課題

特殊緑化技術を用いれば、様々な空間を緑化できますが、メリットだけではありません。

特殊緑化の種類と併せて、適している植物、課題も知っておくべきでしょう。

壁面緑化
壁面緑化とは、文字通り、壁を植物が覆うことで緑化を実現しています。壁面緑化は、環境に優しいだけでなく、インテリアとしても楽しめるので、ホテルや商業施設をはじめとした多くの建物で取り入れられています。普段の生活において、壁面緑化を見たことのある人は多いでしょう。

壁面緑化には、壁を覆って成長する植物を使用して緑化を行う登はん型、壁の上に設置した植物を下に垂らす下垂型、植栽基盤を壁面につける基盤造成型の3種類があります。

壁面緑化で使用する植物は、目的やコストによって、多年草や木本性植物、つる植物など、多様な種類の中から選べます。特に、ヘデラ(アイビー)をはじめとした弦ののびる植物が用いられている建物はよく見られるでしょう。学校や公共施設などでは、ゴーヤや朝顔で壁面緑化を行っているケースもあります。

壁面緑化を行う際は、建物のメンテナンスや植物の手入れのことまで考慮しなければなりません。緑化が進むと建物の強度や耐震性を高める必要があるでしょう。また、植物は、手入れしなければ景観を損ねますし、虫の発生も懸念されます。

壁面緑化は、メンテナンスに意外にお金がかかることを知っておくべきでしょう。

室内緑化
室内緑化は、室内に観葉植物を置いたり、観葉植物を室内で水耕栽培したりして緑化を行います。室内緑化は、空気の浄化作用や癒やしの効果があるだけでなく、インテリアとしても有用です。

サンスベリアやポトス、シェフレラ・アルボリコラなど、室内緑化に使用される植物の種類は多くありますが、植物の特性と日当たりや温度などの室内環境を考慮して植物を選択すると良いでしょう。

室内は、本来植物が育つ外の環境とは異なるため、維持管理が課題になります。室内緑化で使用される植物は、外に比べて日光量が足りません。また、室内は外と異なり、雨も降りませんし、気温や湿度も人間が快適に生活できるように調整されている場合が多いです。

外との環境の差を考慮した維持管理計画を立てる必要があるでしょう。

屋上緑化
屋上緑化は、建造物の屋上を利用して緑化を行います。近年、商業施設や公共施設などの屋上緑化は珍しい光景ではなくなりました。屋上緑化は、環境面で良い影響が期待できるだけでなく、建物の保護、省エネなど様々な効果があります。

屋上は外ではありますが、風が強かったり、乾燥しやすかったりして、本来の植物の生育環境と同じではありません。屋上緑化に使用する植物は、アベリアやセダム類など屋上の厳しい環境に合った植物を選びましょう。

屋上緑化は一般的になりつつありますが、積載荷量が法によって定められていたり、灌水が欠かせなかったりするなどの課題も無視できません。建築と造園の専門知識と技術が必要なため、屋上緑化の施工は専門としている企業に依頼すると安心です。

なぜこれからの時代に特殊緑化の知識が必要?

近年、ヒートアイランド現象や地球温暖化の影響を実感している人は少なくないでしょう。

多くの人が環境の改善に向けて意識が高くなっていますが、政府も対策を講じています。例えば、平成28年5月に閣議決定された地球温暖化対策計画の「ヒートアイランド対策による熱環境改善を通じた都市の低炭素化」では、屋上緑化の推進が唱えられています。

一度壊れてしまった環境は一朝一夕に改善できるわけではありません。今後も、特殊緑化技術が必要とされることは間違いなく、これからの時代、造園業では特殊緑化の知識がより求められるようになるでしょう。

まとめ

社会全体が環境保全への意識が高くなっている現在、多くの建物で特殊緑化が行われています。特殊緑化は、環境の改善に寄与するだけでなく、都市空間も整え、人々の豊かな生活にもつながります。

今後、特殊緑化はますます需要が高まる分野なので、造園業に携わりたい人は、特殊緑化について基礎的な知識を持っておくと役に立つでしょう。