造園工事の簡易課税制度「3種」と「4種」の見分け方とは?

簡易課税の考えの基本

生活に身近な消費税は、商品やサービスを購入する際に消費者が支払っていますが、会社が税を申告して納付しなければなりません。

納付する消費税の計算方法は、原則課税と簡易課税があり、条件を満たした納付者はどちらかを選べます。原則課税は、課税売り上げに関わる消費税額から課税仕入れなどに関わる消費税額を差し引いて出た数字を消費税額とします。

簡易課税制度
簡易課税制度とは、受け取った消費税額にみなし仕入れ率と呼ばれる業種によって決められた一定の割合をかけて納税額を算出する方法です。

簡易課税制度は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の中小企業を対象としています。他にも、消費税の計算方法に簡易課税を選ぶためには、一部の例外を除き、企業は適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに消費税簡易課税制度選択届出書を税務署に提出しなければなりません。

簡易課税を選択することで、企業は消費税の計算が容易になって事務負担が軽減されますし、節税できる場合もあります。しかし、簡易課税制度を選んだ企業は、2年間は原則課税に戻すことができないので、注意が必要です。

目安とフローチャート

簡易課税制度による納税額の計算に使われるみなし仕入れ率は、業種によって定められています。

国税庁のホームページには、事業区分の目安を判定するためのフローチャートが用意されているので、中小企業は確認すると良いでしょう。

他から購入した商品を無加工で販売する企業のうち、他の企業が相手なら第1種事業、消費者に販売するなら第2種事業になります。

第3種事業は、農業や林業、建設業などが該当し、第4種事業は飲食業をはじめ第1業種から第6業種のいずれにも該当しない業種です。

第5種事業は金融・保険業、情報通信業、運輸業、宿泊業、娯楽業など幅広い分野のサービス業が該当し、第6種事業は不動産業になります。

みなし仕入れ率は、第1業種90%、第2業種80%、第3業種70%、第4業種60%、第5業種50%、第6業種40%と定められており、業種によって大きく割合が異なるので、企業は事業区分を正しく選択しなければなりません。

造園業は基本的に3種

造園業といっても、造園工事や剪定業務など様々な種類が存在し、企業によって手掛けている仕事も違います。造園業でも、業務内容によって事業区分が異なるので注意が必要です。

現在は建設業許可を得て造園工事業を営む造園企業が多いですが、造園工事を手掛ける造園業は、基本的に建設業と同じ第3業種に分類されると考えておいて良いでしょう。

第3業種の判断は、日本標準産業分類の大分類を基礎としていますが、日本標準産業分類の大分類Dに掲げられる建設業は、さらに中分類や小分類を見ると造園工事業が含まれています。

もし造園工事を手掛ける企業が、請け負った工事を自社でやらず、下請企業に丸投げした場合であっても、簡易課税制度上の事業区分では第3業種が適用されます。

資材の無償支給がある場合には4種

造園業は、事業区分が難しい業種のうちの一つとして知られています。造園工事を手掛ける造園企業であっても、資材が自己負担か否かで事業区分が異なるので注意が必要です。

加工賃や加工賃に類する料金を対価とする役務の提供を行う仕事は、第4業種に分類されます。役務の提供とは、物を販売するのではなく、技術や専門知識など形のないサービスを他人に提供することです。

造園工事に関して、元請企業から建設資材を無償で支給してもらった場合、役務の提供になるので事業区分は第4業種に分類されます。逆に、造園工事に必要な資材を自社で購入したり、元請企業から有償支給を受けたりした場合、第3業種になります。

また、造園業であっても、第4業種になる仕事内容もあります。日本標準産業分類で園芸サービス業に分類される剪定や庭の管理業務は、有形物の販売ではなく、技術や知識を使ったサービスであり、役務の提供となるため第4業種に該当します。

まとめ

簡易課税事業者とは、簡易課税を利用している企業を指します。

簡易課税制度の利用は任意ですが、造園企業によってはメリットがあるため、簡易課税を選択できる中小企業はメリットとデメリットを比較し、メリットがあると判断すれば制度の利用を検討してみると良いでしょう。

しかし、メリットとデメリットを比較するには、税金に関する知識も必要となるため、企業だけでは難しい面もあります。

特に、業務内容によって建設業や園芸サービス業など異なる産業に分類される造園業は、簡易課税制度における事業区分の判断が難しい場合も少なくありません。

第3業種と第4業種の判断は、資材が無償支給かどうかを基準にすると良いでしょう。

造園業は、第3業種と第4業種のどちらかに分類されるだけではなく、庭の設計だけなら第5業種、樹木の苗木や庭石を一般の消費者に販売するなら第2業種になるなど業種区分が複雑です。

簡易課税制度の利用を迷っている造園企業は、信頼できる税理士に相談し、簡易課税制度を利用した方が良いか否かの判断を助けてもらうと良いでしょう。