建設業・造園業でも話題の2025年問題とは?
「2025年問題」とは、1947年から1949年に生まれた団塊の世代が、2025年以降に75歳以上の後期高齢者になることで生じる問題のことです。
総務省によれば、2021年10月の時点で日本の総人口は1億2278万人で、そのうち75歳以上の後期高齢者は1867万人。これが2025年になると、約2200万人に増加すると言われています。
日本の総人口が減少し続ける中、2025年には4人に1人が後期高齢者となる「超高齢化社会」になってしまうのです。
労働力人口の割合が減少すると人手不足が深刻化していきます。これはどの業界でも起こり得ることであり、建設業・造園業も例外ではありません。
建設業・造園業が抱える課題
2025年問題に伴い、建設業・造園業では「長時間労働」と「高齢化と人材不足」、そして「デジタル化の遅れ」が課題です。
長時間労働
建設業・造園業では、工期遵守のために長時間労働に陥りやすいのが現状です。
国土交通省がまとめた資料によると、2016年度の建設業における年間実労働時間は2065時間で、全調査業種の平均1720時間よりも345時間多くなっています。
参考:建設業における働き方改革
https://www.mlit.go.jp/common/001189945.pdf
この年間実労働時間は、2022年に厚生労働省がまとめた月ごとの労働時間から算出すると造園業では2076時間で、改善されているとは言えない状況です。
働き方改革関連法案の実施により、建設業でも2024年4月から残業時間の罰則つき上限規制が適用されます。長時間労働の問題は、早急に解決すべき課題と言えるでしょう。
高齢化と人材不足
2025年問題における労働力不足は、建設業・造園業にとっても例外ではなく、特に高齢化に伴う人材不足は深刻です。
帝国データバンクが2022年に行った「人手不足に対する企業の動向調査」によると、「正社員の人手不足」と答えた割合は建設業で64.5%、農林水産業で59.5%と、いずれも6割近い企業が人手不足を感じている結果になっています。
また、2020年に行われた国勢調査のデータから算出すると、建設・土木作業員に分類される就業者のうち、65歳以上の高齢者の割合は18%ですが、植木職・造園師の同割合は38%と3分の1以上が高齢者で占められていています。
さらに植木職・造園師は30歳未満の若年層が全体の6%と低い割合で、造園業界の高齢化問題はかなり深刻だと言えるでしょう。
デジタル化の遅れ
現場作業が多い建設業・造園業は、デジタル化の遅れも問題です。
長年にわたり図面や資料など多くの情報が紙媒体で管理されてきたこともあり、なかなかデジタル化が進んでいないのが現状です。
また建設業・造園業は、元請けから下請け、さらに孫請けへ仕事を発注する形態が多く見られます。この形態では実際に現場で作業する労務者が、パソコンなどのデジタル機器を使用する機会はほとんどありません。
孫請け業務を中心に請け負っていると、パソコンなどのデジタル機器は所有していないという会社も多いのです。
さらに高齢化が進んでいる建設業・造園業ではデジタル弱者が多く、一人親方などの個人事業主や中小企業では、デジタル化するための人材が不足していることも原因と言えるでしょう。
建設業・造園業の2025年問題を解決するには?
建設業・造園業の2025年問題を解決するには、人手不足を解消するために雇用の促進を行い、労働環境の改善やデジタルシステムを導入して業務の効率化を進めることが大切です。
人材雇用の促進
高齢化が進み後継者不足に悩む建設業・造園業にとって、人材雇用の促進は急務と言えるでしょう。人手不足解消のためには、若手や女性活用の促進など、幅広い層から人材を確保していくことが重要です。
厚生労働省では若者の雇用や育成に積極的な企業を「ユースエール認定企業」、子育て支援が充実している企業を「くるみん認定企業」として認定。また、女性活躍に積極的な企業に対して「えるぼし認定制度」を実施しています。
認定を受けると企業のイメージアップにつながるだけでなく、認定企業限定の就職面接会に参加が可能になり、人材雇用の機会を増やせるでしょう。
労働環境の改善
人材を確保し長く働いてもらうためには、労働環境の改善をはかりましょう。
2024年4月からは残業時間の上限規制が適用されるため、長時間労働の改善は急務の課題です。
ただこの週休2日制を取り入れるためには、勤怠管理の方法を見直したり、現状の工期設定や経費計上を週休2日制に適したものに変更したりしていかなくてはなりません。
国土交通省では建設業の働き方改革を推進するため、週休2日交替制モデル工事の試行や必要経費の計上方法を見直しして、週休2日制の拡大に取り組んでいます。
参考:週休二日等休日の拡大に向けた取組について
https://www.mlit.go.jp/common/001189945.pdf
これらのモデル事業を参考にして業務の問題点を洗い出し、労働環境の改善につなげていきましょう。
システムの導入
デジタル化の遅れが目立つ建設業・造園業では、新しいシステムを導入して業務の効率化を進めるのが大切です。
日報や勤怠管理、写真台帳の作成などはデジタル化しやすい業務です。これらの業務については、スマートフォンで簡単に使えるアプリが開発されています。
また、工事の受発注をデジタル化したシステムを導入して、経費削減や業務の効率化をはかることも有効でしょう。特にこの受発注のデジタル化は、元請け会社から求められることも多くなっています。
最近では造園業の仕事に特化した業務管理システムも登場していて、顧客管理や見積もりの作成、従業員の勤怠・スケジュール管理や受発注・請求管理など、さまざまな業務が一元管理できます。
多種多様なシステムが登場しているため、デジタル化の進捗状況や費用などに合わせて選択することが可能です。
まとめ
目前に迫っている2025年問題を避けて通ることはできません。解決していくためには、現状を把握し問題点をしっかりと認識することが大切です。
人材の確保、労働環境の改善、デジタル化の推進など、対策していかなければならない課題は山積みですが、自社に合った方法で一つ一つ解決していきましょう。