造園業界の現状からわかる課題!IT化が必要な理由を徹底解説

造園業界の課題

造園業界では人手不足、技術継承の問題、長時間労働の3つの課題を抱えています。

人手不足
人口減少や高齢化に伴う人手不足は、造園業界においても深刻です。

国土交通省が行った建設工事施工統計調査によれば、令和2年度の造園工事業の就業者数は54,954人ですが、前年に比べて6.2%減少しています。

出典:令和2年度建設工事施工統計調査報告
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001473338.pdf

建設業は全般的に人手不足と言われていますが、土木工事業や大工工事業、電気工事業など、前年に比べての就業者数が増加して業種もあります。

造園業における人手不足の問題は、ほかの建設業と比べても深刻な状況と言えるでしょう。

技術継承の問題
造園技術者や技能者の高齢化や、若年労働者の減少により、伝統的な造園技術の継承が難しくなっています。

令和2年度の国勢調査によれば、植木職・造園師の職に就いている人のうち、65歳以上の高齢者の割合は38%で、4割近くを占めています。建設・土木作業員の同割合が18%なので、こちらと比較してもかなり高い割合です。

30歳未満の若年層割合も全体の6%と低い結果であることからも、造園業界では若年労働者が少なく高齢化がすすんでいるため、技術継承が難しい状態です。

出典:令和2年度国勢調査結果
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003464389

長時間労働
厚生労働省が令和4年賃金構造基本統計調査の結果から算出したデータによれば、造園業に就いている人の労働時間は、1ヶ月あたり169時間です。

出典:職業情報提供サイト 造園工
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/222

厚生労働省が毎月行っている勤労統計調査によると、全産業における令和4年6月の月間実労働時間は142時間、12月は137時間でした。

全産業の平均と比べてみても、造園業の労働時間は長い傾向にあります。

出典:毎月勤労統計調査 令和4年6月分・12月分
https://www.mhlw.go.jp/
https://www.mhlw.go.jp/

また厚生労働省は、日本造園組合連合会や日本造園建設業協会を含む、建設産業専門団体連合会の会員企業とその下請け企業に対して、「働き方改革における週休2日制、専門工事業の適正な評価に関する調査」を行っています。

この結果によると、造園工事業で週休2日制や完全土日休みを含む、4週8休以上の休日を就業規則等で設けている、と答えた割合は23.9%でした。

実際に取得できている休日についても、4週7休程度と回答した企業が最も多く、32.8%、さらに53.7%の企業が、4日以上休日出勤をしてると回答しています。

出典:令和3年度 働き方改革における週休2日制、専門工事業の適正な評価に関する調査結果
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000992617.pdf

造園業における長時間労働の問題もまた、改善されているとは言えない状況です。

造園業界でIT化が必要な理由

造園業界でIT化が必要な理由は、前述した造園業界が抱える課題解決の糸口になるからです。

IT化を推進することは、業務の効率化につながります。

たとえば、工事の受発注を電子化すると、書類作成や郵送、管理の手間が減るので、事務作業の負担を軽減できます。工事図面や資料などもタブレット等で確認できるようにすれば、移動時間の削減も可能です。

業務をIT化して効率をあげると、少ない人員でも業務をすすめられるため、造園業界が抱える課題の1つでもある人手不足の解消や長時間労働の削減にもつながるでしょう。

IT化で業務効率をあげる手法の1つとして、ショベルカーなどの建設重機を遠隔操作できるシステムも開発されています。

造園業界の人手不足の一因として、「3K(危険・きつい・汚い)」のイメージがあることがあげられます。

このようなシステムを導入し、危険な作業を削減して効率よく安全に仕事ができれば、業界全体のイメージアップや新規労働者の獲得にもつながるでしょう。

また、植木や庭石などの自然物を相手にする造園業は、長年の経験に裏付けされた、高度な専門的知識が必要な職業です。

かつては熟練技能者と一緒に作業をしながら少しずつ覚えるしかなかった技術やノウハウも、作業している状況を映像に残したり、データとしてまとめたりすることでIT化すれば、知識や技術をストックしておくことが可能です。

技術ストックがあれば、今現役で働いている熟練技能者が退職してしまった後に造園の仕事を始めた人でも、その技術を学ぶことができるのです。IT化は技術継承の一助になると言えます。

造園業界の今後の動向

感染症の流行に伴う生活様式や行動の変化などにより、身近な公園や緑地などのオープンスペースの重要性が再認識されてます。

その一方で、新設住宅着工戸数が減少したり、都市部の3階建て住宅では屋上緑化よりも太陽光発電システムの方が拡大したりしているなど、国内の市場は縮小傾向にあります。

世界的に見ると、ライフスタイルなどの変化により、造園・ガーデニングやアウトドアリビングなど、身近な自然への興味・関心や需要は高まりつつあります。

海外では日本庭園への関心や需要が高まっていることや、2027年に横浜で国際園芸博覧会が開催されることなどから、日本の造園技術・文化を海外へ発信、展開していく機会は増えていくと考えられます。

今後の造園業界では、国際的な視野を持ちながら、伝統的な造園技術と知識を活かして、人と自然が共生する緑豊かな社会づくりに貢献していくことが求められていくでしょう。

まとめ

造園業界は、人手不足と技術継承の問題、長時間労働の課題を抱えていますが、それらを解決する一助となるのが、IT化です。

IT化を推進すれば、業務の効率化が図れ、一人ひとりの仕事量を減らすことができます。人手不足の解消や長時間労働の改善につながるでしょう。造園業の専門的な知識や高度な技術をデータ化すれば、技術継承にも役立ちます。

ライフスタイルの変化に伴い、造園業が創出する身近な公園や緑地などのオープンスペースの必要性は、国内外を問わず、ますます高まっています。

IT化をすすめたり、国際的な視野を取り入れたりすることで、新たな造園業の価値を創出していきましょう。