造園業にも全国大会はある?
学生デザインコンペの審査と表彰、公開シンポジウム、研究発表会が行われる「造園学会全国大会」や、実際の技能面を競う「技能五輪全国大会」など、造園業界にもさまざまな全国大会があります。
目指すべき目標があると仕事にもハリが生まれますし、後々、転職を考えた時に大きなアドバンテージになりますよね。
全国規模で開催される大会で、もう1つ大きな大会に、「ひろげよう 育てよう みどりの都市」全国大会があります。
都市緑化や都市公園の整備に関する各種表彰、講演、事例発表などが行われれ、「内閣総理大臣賞受賞」「国土交通大臣賞」など、名誉ある賞の授賞式も行われるため、造園業界での盛り上がりも大きいです。
今回は「ひろげよう 育てよう みどりの都市」全国大会の概要や表彰項目、参加資格ついて詳しく解説します。
「ひろげよう 育てよう みどりの都市」全国大会とは
国土交通省や地方自治体では、地域住民の緑化意識を高めるために毎年10月を「都市緑化月間」と定め、都市緑化や都市公園整備を推進するさまざまな活動を行っています。
この活動の一環で開催される「ひろげよう 育てよう みどりの都市」全国大会は日本公園緑地協会が主催する大会で、令和5年の大会は、日本の公園制度が太政官布達により始まったことを記念して開催されました。
大会の概要
大会は2日に分けて開催される2部構成で、第1部では記念講演と先進事例発表が行われます。
先進事例発表会は、全国1級造園施工管理技士の会、ランドスケープコンサルタンツ協会、日本公園緑地協会の3団体がそれぞれ実施しているコンクールの受賞作品の紹介と受賞者代表よる事例発表が主な内容です。
第2部では各種表彰、講演、事例報告、第1部で紹介された受賞作品のパネル展示が行われます。
表彰される種目
大会では「都市緑化及び都市公園等整備・保全・美化運動における都市緑化功労者」と「都市公園等コンクール入賞者」の表彰が行われます。
都市緑化功労者は、都市の緑化推進・保全、都市公園の整備などで功績があった民間団体や個人を、国土交通大臣が表彰します。令和5年度は4団体と16名の個人が表彰されました。
日本公園緑地協会が主催する都市公園等コンクールは、完成している都市公園や公共・民間施設の緑地などが対象のコンクールです。
設計、施工、材料・工法・施設、管理運営の4部門に加え、令和5年度は「都市公園制度制定150周年記念部門」の5部門に分けて作品を募集、特に優れた作品に対して国土交通大臣賞、都市局長賞などが与えられました。
参加資格
「ひろげよう 育てよう みどりの都市」全国大会に参加するために、特別な資格は必要ありません。
主な参加者は都市公園や緑化事業など「緑」に携わる仕事をしている人、都市緑化に関する教育機関の教員と学生、 表彰の対象者などですが、大会の趣旨に賛同する団体や個人なら、誰でも参加できます。
ただ、会場参加と第2部の全国大会にWEB参加する場合は、事前の申し込みが必要なのでご注意ください。
本年度受賞者の施工例
令和5年度の受賞作品から、「ランドスケープコンサルタンツ協会賞」と「都市公園等コンクールの設計部門」で国土交通大臣賞をダブル受賞した「東遊園地再整備」、「都市公園等コンクール・都市公園制度制定150周年記念部門」で国土交通大臣賞を受賞した長井海の手公園(ソレイユの丘)の事例を紹介します。
東遊園地再整備
東遊園地は神戸市の中心部にある都市公園です。1868年に日本初の西洋式運動公園として整備されましたが、周辺と共に再整備が行われ、2023年にリニューアルオープンしました。
東遊園地は三宮フラワーロードの中央に位置していますが、閉塞的な印象で人々の流れを分断してしまっているのが課題でした。
そこで「山・海・まちをつなぐ回遊の拠点」「まちに向かって開かれたデザイン」をテーマに、導線を明確にしたり高低差を解消したりして、周辺道路との一体感や開放感の演出を行いました。
大小2カ所ある「芝生ひろば」、高台に配置された「見晴らしひろば」、メタセコイアの並木にそった「みちひろば」などさまざまな「ひろば」を配置することで、季節、時間帯、利用シーンに応じた使い分けや、人々の交流を生み出すことができるデザインが特徴です。
誰もが気軽に訪れ、自由に自分の居場所をつくれる「アウトドアリビング」を作り上げたことが高く評価された作品と言えるでしょう。
長井海の手公園(ソレイユの丘)
長井海の手公園(ソレイユの丘)は2005年に農業体験ができる総合公園として横須賀市に誕生しました。
しかし、開園20年の節目を迎えたこともあり「365日誰もがまるごと遊び楽しめるエンターテイメントパーク」としてリニューアルを行うことに。
ソレイユの「丘」を表現したデザイン、圧倒的な景観を楽しめる眺望スポットの設置など、豊かな自然環境を園内に取り込むことで、ダイナミックなランドスケープデザインを表現しました。
官民が連携し、従来の客層に加えてさらに幅広い人々を呼び込めるよう、イベント会場にもなる広場を設けたり、ジップラインや大型アスレチックを新設したりするなど、さまざまな観光コンテンツを充実させています。
また既存のオートキャンプ場のリニューアルに合わせて、グランピングコテージやトレーラーキャビンを新設しキャンプ施設全体を充実させるなど、新旧施設を共に活かした整備が行われました。
長井海の手公園は官民が連携し、その土地と既存の施設を活かしたリニューアルを行った点が評価されたと言えます。
まとめ
都市緑化月間中に都市緑化や都市公園の整備を推進のために開催される「ひろげよう 育てよう みどりの都市」全国大会は、いくつかある造園業の全国大会の中でも重要な大会の1つです。
都市緑化功労者や都市公園等コンクール入賞者の表彰、各種講演や事例報告が行われるこの大会は、大会の趣旨に賛同する人であれば誰でも参加できます。
都市緑化に関する最新事例に触れられる良い機会ですので、事前申し込みの上、ぜひ参加してみてください。