ランドスケープアーキテクトとはどんな資格?

ランドスケープアーキテクトとは?

ランドスケープとは風景、景色、景観などを意味する言葉で、建築やデザインの分野では都市、公園、広場などを指すこともあります。

加えてアーキテクトとは、建築家、創案者などを意味する言葉で、ランドスケープアーキテクトとはさまざまな外部空間をデザインし風景を作りだす人のことを指しています。

ランドスケープアーキテクトが作る空間には、デザイン性に加えて安全性、快適性、経済性、維持管理性も求められ、環境保全のため自然と共生するデザインであることも重要です。

自然環境とそこに住む人々の暮らしに適した空間づくりを行うのが「ランドスケープアーキテクト」だと言えます。

日本で有名なランドスケープは?

近代的な都市公園のモデルになった日比谷公園、借景の手法を取り入れた修学院離宮、美しく開放的な外観が印象的な東京国際フォーラムなど、日本には有名なランドスケープ作品がたくさんあります。

ここでは、さまざまなランドスケープ作品の中から特徴的な2例を紹介します。

東京ミッドタウン
ホテルや商業施設、オフィス、住居、公園などが集まる東京ミッドタウンのランドスケープデザインは、現代を代表するランドスケープデザイン事務所の1つ、AECOMが担当しました。

石組みを模した建物配置や直線的に区切らない曖昧なデザインなど、日本庭園の概念が取り入れられたデザインが特徴的で、以前あった建物の石組みを再利用したり木を移植したりすることで「土地の記憶」を引き継いでいます。

東京ミッドタウンのランドスケープは、現代的なデザインでありながら、日本庭園の手法を取り入れ、土地の持つ歴史をも表現したデザインと言えるでしょう。

ハルニレテラス
ハルニレテラスは長野県軽井沢町にある、9棟の建物をウッドデッキでつないだ「小さな街」です。

自生していた「ハルニレ」という木々と、傍らを流れる渓流に向かって複雑に傾斜する地形をそのまま活かすため、点在する建物をつなぐウッドデッキは地形に応じて高さを変えたり、穴が開いたりしています。

これについてランドスケープデザインを担当した1人、オンサイト計画設計事務所の鈴木裕治氏はインタビューの中で「植わっている木々をうまくアレンジしながら建物を配置して、どう居場所をつくり、どう座らせて、どのように木を見たら良いのか、とその場所ありきでデザインした」と語っています。

ハルニレの大木に包み込まれるように配置された建物は、周囲の景観の損ねないよう配慮されています。隣接する駐車場も道路から1段低いところにつくられているので、目立ちにくい設計です。

ハルニレテラスは周辺環境の保全とデザイン性が両立したランドスケープ作品と言えるでしょう。

ランドスケープアーキテクトはどんな人に向いてる?

周辺環境と調和した空間を作るランドスケープアーキテクトは、自然やその基盤となる植物を愛する人に適性があります。

設計時はその空間が将来どのように変化するのかを想像したり、歴史的・文化的背景を踏まえてその場所にふさわしいのかを考えたりするので、豊かな想像力と幅広い視点をもつ人も適性があると言えるでしょう。

また、ランドスケープアーキテクトには、コミュニケーション能力も必要です。

ランドスケープデザインにはクライアントだけではなく、建築家、土木の設計者、周辺住民などさまざまな人が関わります。

これらの人々に設計者としてのイメージや空間の使い方を正確に伝えるためには、コミュニケーション能力が役立ちます。

ランドスケープアーキテクトになるには?

ランドスケープアーキテクトになるために必要な資格はありませんが、関連する資格に登録ランドスケープアーキテクト(以下RLA)があります。

RLAを名乗るためにはランドスケープコンサルタンツ協会が実施する試験に合格しなければなりません。そこで受験資格や過去問の入手方法を紹介します。

受験資格
RLAの受験には最終学歴に応じたランドスケープ設計に関する業務経験が必要で、このうち1年以上は主体的な立場でその業務に取り組んでいる必要があります。

詳細な業務経験年数は以下です。

|最終学歴|RLA補有資格者|指定学科卒業者|指定学科以外卒業者|h
|大学|資格登録後2年以上|卒業後3年以上|卒業後5年以上|
|短期大学|資格登録後3年以上|卒業後5年以上|卒業後7年以上|
|高校|資格登録後5年以上|卒業後7年以上|卒業後9年以上|
|上記以外|資格登録後7年以上|-|卒業後12年以上|

RLA補有資格者とは、RLAの1次試験に合格し登録した人のことです。

指定学科は、1級造園施工管理技術検定の指定学科に準じています。土木科や緑地科、造園科、園芸科、林学科、建築科などが対象学科です。

過去問はどこで手に入る?
RLA試験の過去問は2023年12月現在、ランドスケープコンサルタンツ協会のホームページで、2次試験の問題のみ2018年、2019年、2021年、2022年分がダウンロードできます。

1次試験の過去問は、試験方式の変更に伴い2023年度から公開されていませんが、RLAの有資格者が組織するランドスケープアーキテクト連盟では、1次試験対策セミナーをオンラインで開催しています。

出題分野や問題例の解説をしているので、過去問を入手する代わりに受講してみるのも良いでしょう。

まとめ

ランドスケープアーキテクトは周辺環境や人々の暮らしに沿った安全で快適な外部空間をデザインし風景を作りだす専門家です。

さまざまな人と協力して、自然と調和した空間を作るランドスケープアーキテクトには、植物が好きな人、豊かな想像力と幅広い視点をもつ人、コミュニケーション能力が高い人が向いています。

関連する資格には登録ランドスケープアーキテクト(RLA)があり、受験には最終学歴に応じた実務経験が必要です。

過去問やオンラインセミナーを受講して独学で資格を取ることもできるので、興味がある方は是非チャレンジしてみてください。