働き方改革加速プログラムが執行されるとどんなメリットが?建設業に与える影響を解説

「働き方改革加速化プログラム」は、建設業界をより働きやすい環境に整えるための取り組みです。

働き方改革を推進し、高齢化や長時間労働などの課題を解決するための具体的な対策が盛り込まれています。

建設業界が抱える課題の解決と多様な働き方を選択するために有効な「建設業働き方改革加速化プログラム」について詳しく解説していきます。

建設業界を取り巻く課題と現状

建設業界の現状と課題について、高齢化、給与、社会保険加入率、労働時間の4つの観点から見ていきましょう。

高齢化
2022年に行われた調査によると、建設業就業者のうち55歳以上の占める割合が35.9%、29歳以下が11.7%でした。

これは全産業平均と比較して55歳以上の人が占める割合が高く、29歳以下の人の割合が低い結果です。

また建設業者数、建設業就業者数はともに減少傾向にあります。

建設業界において高齢化に伴う労働人口の確保と次世代への技術承継は急務の課題と言えるでしょう。

出典:日本建設業連合会 建設業デジタルハンドブック
https://www.nikkenren.com/

給与
建設業における給与は上昇傾向です。

2023年の賃金構造基本統計調査によると、同じ「生産労働者」に分類される製造業に比べても産業別賃金はやや高い結果でした。

出典:令和4年賃金構造基本統計調査 第5表 産業、性、年齢階級別賃金及び対前年増減率
https://www.mhlw.go.jp/

社会保険加入率
令和3年10月に行われた調査によると、企業単位で社会保険に加入している割合は98%と高い水準でしたが、労働者別に見ると88%の加入率でした。

加入率は年々向上していますが業種や下請け次数によって加入率は異なるため、今後はそれぞれの状況に応じた対策が必要でしょう。

出典:公共事業労務費調査における社会保険加入状況調査結果の公表
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001472327.pdf

労働時間
建設業における2022年の年間労働時間は1986時間、年間出勤日数は240日で、どちらも調査産業平均よりも長い結果です。

また令和5年11月の毎月勤労統計調査でも、建設業の月間実労働時間は170.3時間、出勤日数は20.8日でどちらも平均よりも高い結果でした。

建設業では2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されます。長時間労働への対策は、今後優先して取り組むべき課題でしょう。

出典:日本建設業連合会 建設業デジタルハンドブック
https://www.nikkenren.com/

出典:毎月勤労統計調査 令和5年11月分結果確報
https://www.mhlw.go.jp/

建設業働き方改革加速化プログラムとは?

「建設業働き方改革加速化プログラム」は、建設業における働き方改革をよりスピーディーに進めるために、2018年3月に国土交通省が策定した施策です。

2019年から順次実行されている「働き方改革関連法案」では、時間外労働の上限規制や年次有給休暇の取得義務化などについて規定されています。

建設業は時間外労働の上限規制について5年の猶予が設けられましたが、適用に向けて労働時間を段階的に短縮していくことが必要でした。

また建設業界では適切な賃金水準を確保することや、社会保険加入率を向上させて労働環境の改善に努める必要もありました。

これらの課題の具体的な解決策として策定されたのが、「建設業働き方改革加速化プログラム」なのです。

課題解決のためにできること

建設業働き方改革加速化プログラムでは、業界が抱える長時間労働の是正、給与・社会保険加入率の向上、生産性の向上といった課題解決に役立つ具体策が示されています。

それぞれの内容について詳しく説明していきましょう。

長時間労働の是正
長時間労働を是正するためには、週休2日制の導入と適正な工期設定することが有効です。

関係省庁では公共工事における週休2日制を拡大したり、それに伴う必要経費を的確に補填できるよう、労務費の補正、共通仮設費・現場管理費の補正率を見直したりしています。

関連団体で実施している「働き方改革4点セット」や休日取得への意識付けるため「休日月1+(つきいちプラス)」運動も、長時間労働是正のための対策です。

また長時間労働の是正には適正な工期を設定することも必要でしょう。

国土交通省は働き方改革関連法の制定を受けて「適正な工期設定等のためのガイドライン」を改訂し、週休2日制の確保や、準備・後片付け期間、天候不良で作業ができない期間を考慮した工期設定を求めています。

給与・社会保険加入率の向上
一人ひとりの技能や経験に即した給与を実現したり、社会保険加入率を向上させたりすることも大切です。

具体的な支援策として、所有資格、社会保険加入状況、現場の就業履歴などを建設業界全体で登録・蓄積する「建設キャリアアップシステム」が2019年から運用されています。

それと同時にレベルに応じた処遇が受けられるよう、技能者の技能と経験を評価する能力評価制度も実施されました。

社会保険加入率向上のため施策としては、2020年10月から建設業許可の新規申請や更新の際、社会保険への加入が要件として追加されています。

生産性の向上
仕事を効率化したり新しい技術を導入したりすることで生産性を向上させ、働きやすい環境を整えることも重要です。

国土交通省では、建設現場でICT(情報通信技術)を活用して生産性の向上を図る「i-Construction」を推進しています。

これは公共工事の積算基準にICT建機のみで施工する単価を新設したり、書類を簡素化したりすることで、施工品質の向上と省力化につなげる仕組みです。

また将来的に技術者が減少することを踏まえ、現場技術者要件を見直し、上位下請企業の主任技術者が下位下請企業の主任技術者の業務範囲をカバーするといった合理化が検討されています。

まとめ

2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されることもあり、建設業界において働き方改革を進めることは急務の課題です。

働き方改革加速化プログラムでは、現在の建設業界が抱える課題を解決する糸口となるさまざまな取り組みが行われています。

すでに実施されているさまざまな法令への対応も含め、働き方改革加速化プログラムを活用して適正な事業と就業環境の維持に努めましょう。