職長・安全衛生責任者とは?施工管理とは違う?

職長・安全衛生責任者とは?

建設業において、職長や安全衛生責任者は欠かせないポジションで、職長と安全衛生責任者を兼任する場合も珍しくありません。しかし、職長と安全衛生責任者の役割には違いがあります。

職長
職長とは、建設業の工事現場などにおいて、労働者を指揮監督する立場にある人を指します。職長は、危険と隣り合わせの環境で業務に取り組む作業員の健康や安全を確保する上で重要な役割を担うため、各工事現場で一人は必要になる存在です。

例えば、事故防止や作業の効率化のため、職長は作業員の体調を把握したり、能力を見極めたりした上で、作業員の適切な配置や作業手順などを判断しなければなりません。

安全衛生責任者
安全衛生責任者は、現場において連絡や調整係としての任務にあたる人です。

造船業と建設業では、統括安全衛生責任者を選任しなければなりませんが、複数の下請け企業で作業する混在作業場において、元請け企業が統括安全衛生責任者を選任したら、下請け企業にあたる関係請負人は安全衛生責任者を選任しなければならないと労働安全衛生法で定められています。

安全衛生責任者は、混在作業による労働災害を防止するために統括安全衛生責任者と連絡をしたり、2次・3次の下請け企業や他業種の関係者などと連絡や調整をしたりします。

施工管理の資格だけではなれないの?

「職長になるためには職長教育を受けなければならない」と労働安全衛生法60条で定められています。安全衛生責任者も、職長教育と同様に、安全衛生責任者教育を受講しなければなりません。

職長教育の対象となる業種は建設業に限らず、一部の製造業や電気、ガス、自動車整備業、機械修理業と多岐にわたります。

特に建設業に関しては、職長と安全衛生責任者を兼任する場合が多いので、厚生労働省は職長教育と安全衛生責任者教育を統合した職長・安全衛生責任者教育の実施を推し進めています。

職長や安全衛生責任者を任命する際に、年齢制限や施工管理資格などの資格要件は定められていません。

施工管理技士の資格所持者は、施工管理技士資格を取得する際に安全管理について試験で問われるので、講習受講の要否を迷う人もいるかもしれません。

施工管理技士は、労働安全衛生法などで特に省略可能な上位資格として定められているわけではないので、新たに職長や安全衛生責任者に選任された際は、職長教育や安全衛生責任者教育の受講が必要です。

職長教育
職長教育は、新たに職務に就く職長の他、作業にあたる労働者を指導監督する人が対象です。

職長教育を受ける人は、現場で安全に作業できるよう環境を整えたり、作業員に指導したりする知識を習得します。実技はなく、試験もありません。

職長教育の受講後に交付される修了証が職長教育を受講した証しになります。

職長教育の受講自体は難しくないものの、受講が義務付けられている理由や職長が担う役割の責任の重さなどを考え、しっかり受講内容を頭に入れておくことが求められるでしょう。

安全衛生責任者教育
安全衛生責任者教育は、安全衛生責任者の選任要件などから、建設業の請負人側から選ばれた人を受講対象にしているといえます。

安全衛生責任者教育では、複数の下請け企業が混在して作業する現場において、統括衛生安全責任者や下請け企業と連携して安全を確保しつつ、適切に作業を進めるために必要な知識を習得します。

受講内容とスケジュールを紹介

職長と安全衛生責任者は、職務内容が異なるため、教育対象者や内容にも違いがあります。職長教育や職長・安全衛生責任者教育は、労基連や各協会で受講できる他、Webでの講座受講も可能です。

職長教育の講習内容とスケジュール
職長教育は、労働安全衛生法によって講習内容と講習時間が規定されています。

作業手順の進め方と労働者の適正な配置方法について2時間、指導方法や監督に関して2.5時間、危険性や有害性の調査方法、調査結果に対する措置や改善方法などについて4時間、異常時や災害発生時の措置について1.5時間、現場の保守管理方法や労働災害防止に関する関心の保持について2時間となっています。

合計で12時間の受講内容を2日間にわたって受講します。

安全衛生責任者教育の講習内容とスケジュール
安全衛生責任者教育の講習内容は、大部分が職長教育と同じですが、安全衛生責任者教育では職長教育の講座内容の他、安全衛生責任者の職務等について1時間、統括安全衛生管理の進め方について1時間を追加で学ばなければなりません。

建設業では、職長教育と安全衛生責任者教育を統合した職長・安全衛生責任者教育の14時間ある講座を2日かけて受講します。

まとめ
職長と安全衛生責任者は職務内容こそ違いますが、どちらも現場で働く労働者が安全に作業を進めるためにとても重要な存在です。

職長と安全衛生責任者は講習受講だけとなっており、資格試験ではありませんが、受講者は職務の重要性をしっかり理解した上で講座を受講しましょう。