前職が雇用保険の手続きをしていなかった場合、失業保険は受け取れない?

雇用保険の対象者

失業したり、自己都合で退職したりした際に支給される雇用保険。雇用保険は、一般的に失業保険と呼ばれることも多いですが、雇用保険が正式名称で、失業保険も雇用保険も加入条件に違いはありません。

雇用保険は、仕事を失った人が新たな仕事に就く準備をしたり、不安なく当面の生活を送ったりするための資金となるので、失業した人にとってはありがたい制度です。

失業時に雇用保険を受給するためには、雇用保険の加入者でなければなりませんが、雇用保険に加入するには条件があります。

雇用保険に加入するための二つの条件
雇用保険に加入するためには二つの条件を満たさなければなりません。一つ目は、31日以上の雇用が見込まれていることです。二つ目は、1週間の所定労働時間が20時間以上ある場合です。

尚、雇用保険への加入に雇用形態は関係ないので、雇用形態がパートやアルバイトであっても、事業主は条件を満たした労働者を雇用保険に加入させなければなりません。

雇用保険は、農林水産業の一部、会社の役員や取締役などを除いて、すべて適用事業になるため、雇用保険への加入条件を鑑みても、大多数の労働者が雇用保険の対象者になるといえるでしょう。

見習いでも加入する必要がある

見習いの場合、雇用保険に加入すべきか迷う事業主もいるかもしれませんが、見習いであっても雇用保険に加入する必要があります。

造園業をはじめ、職人の世界では、一人前になるためにかなりの時間を要するのが一般的で、見習い期間が年単位になることも珍しくありません。

見習い期間が長期雇用を前提にしていること、見習いは十分な仕事ができるだけの技量や知識はありませんが、本採用の労働者と同じ扱いであることを考慮すれば、見習いとして働く労働者も雇用保険の加入条件に該当します。

造園業で見習いを募集している求人の中には、雇用保険を含む社会保険完備と記載された求人も見られるでしょう。

個人事業主(親方)のもとで働いていても加入する必要がある

雇用保険は、個人事業主である一人親方には適用されません。個人事業主は、労働者ではないからです。

しかし、個人事業主が年間100日以上勤務する労働者を一人でも雇用した場合、事業主は労働者を雇用保険に加入させる義務があります。

法人であろうと、個人事業主であろうと、労働者の雇用保険の加入義務や手続きに違いはありません。

個人事業主が労働者を雇った場合、基本的には親方がハローワークに足を運び、雇用保険の加入手続きを行うことになりますが、労働保険事務組合に手続きを委託する場合もあります。

失業時に雇用保険に入っていなかった場合

雇用保険の保険料は、会社と労働者の両者が負担するシステムになっています。

雇用保険料は、会社が労働者に払う賃金に雇用保険料率をかけて算出した金額です。2022年10月には、社会情勢を鑑みて、雇用保険料率が引き上げられます。

雇用保険に加入すると、雇用保険被保険者証が発行されます。在職中の人で雇用保険被保険者証をもらってないという人もいるかもしれませんが、一般的に雇用保険被保険者証は退職日に会社から受け取るものなので、在職中に目にすることはないでしょう。

しかし、雇用保険被保険者証は、在職中に使用しないものだからこそ、労働者は雇用保険の未加入に気づきにくいです。雇用保険の未加入は、労働者にとって大きな不利益です。

失業時に雇用保険に未加入だったとわかった場合でも、失業手当を受け取る方法がないわけではありません。雇用保険は、最大2年の遡及加入ができるので、会社と労働者の双方が、過去2年分の雇用保険料を納めることで、2年分に相当する失業手当を受給できます。

もし、労働者が会社に遡及できる期間分の雇用保険料を納めるよう求めても会社が応じない場合、労働者は泣き寝入りするのではなく、ハローワークに相談しましょう。また、労働者は、弁護士や専門家の力を借りて、雇用保険に未加入の会社に対し、損害賠償請求もできます。

まとめ

労働者を雇用する事業主は、個人事業主であろうと、労働者の雇用形態が見習いであろうと、条件を満たす労働者を雇用する限り、雇用保険に加入しなければなりません。

また、労働者も、雇用保険の 加入条件を満たせば、意思に関係なく被保険者になります。

しかし、現実には、雇用保険の加入義務があることを知りながら、雇用保険料の会社負担を避けるために雇用保険に未加入の会社も存在します。

退職した人は、前職が雇用保険の手続きをしていなかったとわかった場合でも失業手当を受け取れる方法はあるので、然るべき対応を取りましょう。

また、現在就業中の人で、会社が雇用保険に加入しているか不明な人は、給与明細の控除項目に雇用保険の記載の有無で加入が確認できますが、ハローワークに問い合わせてみるのが確実です。