感染症の影響は、幅広い業種に及んでおり、建設業においても工事の長期化、資材高騰や人材不足などに悩まされています。
建設業を含め、生き残りをかけて業態変更や新事業展開などを迫られている企業は少なくありません。国は、事業再構築に挑戦する企業をサポートするための補助金を準備しています。
事業再構築補助金とは?
事業再構築補助金とは、既存の中小企業が新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事業再編など、思い切った事業の再構築を図る際、国が企業の支援をするために設けられた補助金制度です。
長期化する感染症により、経営が左右されるほど大きな影響を受けている企業はたくさんあります。
事業再構築補助金は、需要や売り上げが落ちる企業が少なくない中、社会の変化に追随するため、事業再構築を試みる中小企業に国が支援をすることで、日本経済の構造転換を促す狙いがあります。
事業再構築補助金のポイント
事業再構築補助金に申請する企業は、規定された要件を満たさなければなりません。事業再構築補助金の場合、感染症による影響で2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が10%以上減少していること、指針に示された事業再構築を行うこと、認定経営革新等支援機関と事業計画を策定することなどが要件となっています。
申請する枠によって、要件が異なるので、企業は公募要領をよく確認しましょう。
申請した全ての企業が事業再構築補助金を受け取れるわけではありません。審査によって、不採択になることもあります。また、採択された場合でも、採択後に事務局によって補助事業の対象経費等の妥当性について確認が行われ、交付の決定に至ります。
事業再構築補助金の枠
事業再構築補助金は、2021年3月に第1回公募が開始され、通常枠、卒業枠、グローバルV字回復枠、緊急事態宣言特別枠が設けられていました。
第3回公募時には、新たに最低賃金枠と大規模賃金引上枠が創設されています。新たな枠が創設されたり、既存枠が廃止や統合されたりすることがあるので、事業再構築補助金に申請する企業は、最新情報を確認する必要があります。
グリーン成長枠のポイント
事業再構築補助金の第6回公募時に「回復・再生応援枠」と共に「グリーン成長枠」が新設されました。新設された2つの枠は、第6回公募以降もずっと継続されており、特にグリーン成長枠への注目度が高いです。
グリーン成長枠が創設された背景
世界的に温室効果ガスが問題になって久しいですが、2020年、日本は2050年までにカーボンニュートラルを目指すと宣言しました。
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることです。現在、温暖化対策は、社会構造を変革し、産業構造の転換や成長を生み出す機会と捉えられ、国によってグリーン成長戦略が推進されています。
グリーン成長戦略は、温暖化対策だけに留まらず、国民生活へのメリットも考慮されている点は特筆すべきでしょう。
グリーン成長戦略では、2050年を見据えて成長が期待できる14の重点分野が挙げられ、多面的な支援体制が整えられており、事業再構築補助金のグリーン成長枠も支援の一つです。
事業再構築補助金のグリーン成長枠は、研究や技術を開発したり、人材育成をしたりしながら、グリーン成長戦略で挙げられた14分野において課題解決に取り組む企業を支援するために設けられています。
グリーン成長枠の注目すべき点
事業再構築補助金のグリーン成長枠は、売り上げ10%以上減少の要件がない他、補助上限額が1.5億円となっている点、一度採択された企業も再度申請できる点が特徴です。
しかし、グリーン成長枠の事業再構築内容は、グリーン成長戦略にある14分野の課題解決に資するものにする必要があります。
更に、認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する際、通常枠なら付加価値額は年率平均3.0%以上の増加を目指すべきところ、グリーン成長枠では5.0%以上となっている点で、申請へのハードルが高いと感じる企業もあるかもしれません。
建設業におけるグリーン成長枠の活用例
事業再構築補助金のグリーン成長枠で挙げられた14分野に関して、中小企業庁が公開している想定事例から建設業に関する例を見てみましょう。
重点分野の内、「住宅・建築物産業・次世代電力マネジメント」に含まれる建設業の事例では、感染症が蔓延する前は新築住宅の施工を手掛けていた建設業が、感染症の終息後に中古住宅のリノベーション販売を新分野として展開する想定が示されています。
まとめ
建設業をはじめ、感染症による影響を受けている企業は、事業再構築補助金を活用し、事業再構築への挑戦を検討してみるといいでしょう。
建設業の場合、自社所有の土地を使ってオートキャンプ場を整備し、観光事業に参入する事例が経済産業省のリーフレットに掲載されている他、グリーン成長枠で中古住宅のリノベーション販売に新展開する想定事例が示されるなど、アイデア次第で企業が成長する可能性は無限に広がっています。