造園業の昔と今
造園業と聞けば、庭の手入れをする仕事をイメージする人が多いでしょう。庭付き一軒家が一種のステータスと考えられ、造園業が忙しかった時代もありました。
しかし、時代の移り変わりと共に、庭付き一軒家の需要が減り、今は庭の手入れをする造園業を身近に感じる機会が少なくなってきています。
現在、造園業は庭の手入れだけでなく、29業種ある建設業許可の一つである造園工事業の許可を得て、造園工事を手掛ける企業も多くあります。
造園業の数は減っている
国土交通省の「建設業許可業者数調査の結果について」 によると、造園工事業の許可を得ている造園企業の数は、平成16年までは横這いで推移していましたが、平成17年を境に減少に転じています。
建設業の全許可を得た企業数も平成17年から減少傾向にありますが、造園工事業者の減少ペースは建設業全体の減少ペースよりも早いことが分かります。
造園業の収益について
国土交通省の「建設工事施工統計調査報告書」によれば、造園工事業の完成工事高は、平成15年に8,272億円に対し、平成23年には平成15年の約半分の4,131億円になっており、造園工事業の置かれた環境が厳しいことが見て取れます。
しかし、平成24年以降、造園工事業の完成工事高は微増減の繰り返しに留まり、大きな減少は見られません。
造園業の未来は
造園業は、昔ながらの個人邸宅における庭の仕事は減っていますが、洋風庭園の需要が増加していたり、環境保全への関心が高まったりして、造園業の仕事の幅は広がりつつあります。
造園業への就業希望者は、造園業の将来性を不安視する必要はありません。
公共事業が安定
造園業は公共事業を受注することで、安定して仕事があります。公共事業とは、国や自治体が国民生活をより良くするために税金を使って行う事業です。公共事業で造園業が手掛ける仕事は、公園整備や緑地帯の設置、街路樹の保守、公共施設の緑化工事など多岐にわたります。
大手企業からの受注が増える
造園業といっても様々な規模の企業があり、企業規模が大きくなる程、安定性は増すでしょう。
大手造園会社は、大手ゼネコンや建設会社との取り引きがあるので、仕事に困ることはありません。
また、大手造園会社は、知名度も高く、これまで築いてきた実績もあるため、顧客からの信頼も厚いです。顧客には、名の知れた寺社や有名なホテル、老舗の料亭などもあり、定期的に庭園の管理や改造などの仕事が期待できます。
造園のプロとして未来も活躍するには…?
造園業の数は減っていますが、造園業の将来性はあるので、造園業での就業を希望する人は、どうすれば造園のプロフェッショナルとして生き残れるかを模索することが必要です。
造園業で働きながら未来も活躍する方法は幾つかあるので、できることから実行すると良いでしょう。
各種資格取得は必須
造園業に就職するにあたって、資格は必要ありませんし、無資格でできる仕事もあります。
造園業で働くには、技術磨きももちろん大事です。しかし、造園業のプロとして生き残るには、幅広い業務に携わって経験を積んだり、責任ある仕事に就いたりすることが求められるため、資格取得が必須です。
造園業に関連する資格は多くあり、業務に必要な資格を優先的に取得すれば良いですが、特に1級造園施工管理技士や1級造園技能士の資格は業界で高く評価されており、転職の際にも有利になり、どの企業に行っても重宝されるでしょう。
大きな事業に携われる造園会社への就職が有利
造園会社は、企業規模によって請け負う仕事内容が異なってきます。
個人邸宅での植栽やエクステリアを主に手掛ける造園会社は、小規模なところが多いです。一方、企業規模が大きくなる程、公共工事や大きな事業に携われる機会が増えるため、造園施工管理技士として将来的に活躍したい人は、大手の造園会社への就職が有利になるでしょう。
空き家問題を狙って個人宅のみを請け負うのも◎
個人宅の庭管理は需要が下がっているとはいえ、仕事がないわけではありません。高齢化社会に伴って空き家が問題になっていますが、造園企業への問い合わせには空き家に関する相談も含まれています。
空き家の庭にある放置された樹木は、隣家や道路に伸び放題となったり、害虫が発生したりしてトラブルを引き起こし、苦情を受けた所有者が造園企業に手入れを依頼するケースが多くみられます。
今後、空き家は増加することが想定されるため、造園企業は、空き家問題を狙って、個人宅のみを請け負うのも生き残るための一つの手段となるでしょう。
まとめ
造園業が昔と同じままの形態で生き残ることは簡単ではありません。しかし、今後も需要のある公共事業を取り扱っている会社は将来的にも明るいです。
造園業に従事する人は、資格を取得したり、空き家や環境保全など社会問題を解決できるような仕事に目を付けたりすることで、今後も仕事の獲得が期待できるでしょう。
造園業で継続的に仕事を得るためにも、労働者は幅広い仕事に対応できるとより心強いです。造園業の労働者は、色々な仕事に挑戦して経験を積み、さらに技術を磨いたり、知識を得たりする努力が求められるでしょう。