建設DXとは?
建設DXは「建設デジタルトランスフォーメーション」の略語です。
トランスフォーメーションは「変化・変容」という意味。建設DXはデジタル技術を活用して今までの仕事の仕組みや方法を変えていく、という取り組みのことです。
顧客や社会のニーズに合った新しいモデルを確立していくことで、他社との差別化をはかり、経営上の強みになるツールなのです。
建設DXが注目される背景
建設DXが注目されている背景には、造園業が抱える従来の仕組みでは解決しにくい3つの課題があります。
1つめは人材不足。人口減少に伴う労働人口の減少、高齢化は造園業界においても深刻です。
造園業の就労者数は2004年には約7万2千人でしたが、2020年には約5万5千人と減少を続けています。
2020年の国勢調査の結果から造園業に従事する65歳以上の高齢者の割合を算出してみると38%で、高齢化が進んでいることがわかります。
担い手不足を解消するためにも若手の人材を確保し、世代交代を進めていくことが大切なのです。
2つめの課題は、労働生産性が低いことです。労働生産性とは、従業員一人あたり、または1時間あたりの付加価値額のことで、労働の効率をはかる指標です。
2022年版のTKC経営指標速報によると、造園工事業一人あたりの年間売上高は約1,600万円なのに対し、土木工事業で約2,100万、大工工事業で2,800万と、建設業の中で比べても低い値です。
参考:『TKC経営指標』速報版(建設業)
https://www.tkc.co.jp/
建設業は一般的に、現場ごとに違う設計や作業を行うため標準化しにくいこと、慢性的な人手不足や長時間労働・アナログ作業中心の膨大な事務作業により、作業効率が悪いことなどから、労働生産性が低いと言われています。
これらの理由は、造園業の仕事にもそのまま当てはまってしまうのです。
3つめはインフラの老朽化です。
高度成長期に整備されたインフラは、大規模な修繕や更新を行わなければならない時期を迎えています。
頻発する大規模自然災害に対応するためにも、インフラのメンテナンスは急務と言えますが、財政難により公共投資への削減が進み、建設業・造園業では十分な人員と予算を確保できていない現状です。
これらの課題を解決していくために、建設DXを導入していくことが必要なのです。
建設DXを導入するメリット
建設DXを導入することは業務の効率化や省人化を進めることができる、技術継承がしやすくなる、といったメリットがあります。
業務の効率化
効率化においてポイントとなるのが、建設DXの「デジタル」の部分です。
ICTとは情報通信技術を意味し、IT技術の中でもコミュニケーションや情報共有の技術を中心に示す言葉ですが、造園業界においてもこのICT化を推進することで、業務の効率化をはかれます。
例えばスマートフォンやタブレットを使って現場で図面や写真の確認をしたり、コミュニケーションツールを用いて遠隔地で指示を出したりすれば、移動時間を短縮することが可能です。
また、ドローンを用いた3次元測量や、3次元設計データを取り込んで半自動で作業ができるICT建機など、人手不足解消が期待できる新しい技術にも注目が集まっています。
省人化を進められる
「省人化」とは、業務を見直して無駄を省いたり機械を導入することで、その作業に従事していた人員を削減したりすることです。省人化を進めることにより、人手不足や長時間労働を解消できるのです。
危険な作業を機械化することで、現場作業の安全性を確保し、労働環境を改善できるでしょう。
造園業では舗装基盤の先行施工を行うことで、建設工事時の仮設通路として利用すると共に外構工事期間の短縮する、作業の簡略化と工期の短縮のためにコンクリートブロックを使った擁壁システムを開発する、などの取り組みを進める企業も登場しています。
技術継承がスムーズ
高齢化が進み、若手の人材育成が難しくなっている造園業では、熟練した技術やノウハウが次世代に受け継がれていかないことも問題です。
造園業では樹木や景石などの形が決まっていない自然物を扱うため、長年の経験や勘に基づく技術や知識が多い業種と言えます。
今までは口頭や実際に見て覚えるしかなかった熟練技能者の技術やノウハウを、建設DXを導入してデータ化したり画像や動画で記録したりすることで、視覚的な理解度が高まり、次世代に受け継がれやすくなるのです。
建設DXを導入するデメリット
建設DXを導入するデメリットとしては、経営戦略がたてにくい、コストがかかる、既存システムとの使い分けが難しい、といった点があげられます。
経営戦略をたてにくい
建設DXは今までの業務内容や仕組みを刷新し、新たな仕組みを作り出すことなので、「こうすればこうなる」という明確なモデルがありません。
費用対効果がわかりにくい、効果を感じるまで時間がかかる、などの懸念事項があるため、経営戦略をたてにくいのです。
コストがかかる
DX化を推進し、システムを変更・構築するためには、初期費用やランニングコストがかかります。
特にデジタル化に遅れが見られる造園業には、初期投資としてITツールを新たに導入したり、拡充したりする必要が出てくるでしょう。
導入後の効果が得られるまでに時間が必要なことが多く、ランニングコストがかかることもデメリットと言えます。
既存システムとの使い分けが難しい
長きにわたって使われてきた既存の業務システムは、老朽化に伴い複雑化・煩雑化していると言われています。
この既存システムを残したままDX化してしまうと、情報の管理がさらに複雑になり、新しいシステムが上手く作用しません。
建設DXは既存システムの一部を変更したり、併用したりするのが難しく、新たなシステムを一から構築するため、多くの時間と費用がかかってしまうのです。
まとめ
建設DXにはコストがかかるなどのデメリットもありますが、高齢化や人手不足、長時間労働など造園業が抱える課題を解決してくれる手法の一つと言えます。
建設DXの導入は一朝一夕でできるものではありません。既存の業務を見直し、問題点を洗い出すことから始めていきましょう。
その上で新しいシステムを構築し、自社の将来にとって長期的に有効な手法で、建設DXを推進していくことが大切です。