JVとは?
JVとは、Joint Venture(ジョイントベンチャー)の略称。一つの工事を複数の企業で受注、施工するために形成する事業組織体のことです。
造園業では主に、大規模公園や緑地の施工、それらの維持管理、整備などの公共工事でJVが結成されています。
大規模で複雑な工事内容に対応するためには、さまざまな観点の専門的スキルや人材が必要です。
各企業が専門的知識や技術、資金力などを持ち寄ってJVを結成し、協力・連携することで、それぞれの得意分野を活かした大規模な工事が可能になるのです。
JVの種類
JVは活用目的によって、特定建設工事共同企業体、経常建設共同企業体、地域維持型建設共同企業体、復旧・復興建設工事共同企業体の4つの種類があります。
特定建設工事共同企業体(特定JV)
専門的な知識・技術を必要とする大規模で技術的難度が高い、特定の工事を受注、施工するために組まれるJVです。
各分野に秀でた企業がそれぞれの力を集結し、安定的施工を確保するのが目的です。
工事ごとに形成されるJVのため、工事が完了したり、受注しなかったりしたときには解散します。
経常建設共同企業体(経常JV)
中小または中堅企業同士で、継続的な協業関係を築き、経営力・施工力を強化する目的で結成するJVで、「通年型」とも呼ばれます。
単体の企業と同様に、経常JVとして一定期間、入札参加資格を保有することが可能。
自社だけでは請け負いきれない規模の工事も受注できるので、中小企業のスキルアップにつながると考えられています。
地域維持型建設共同企業体(地域維持型JV)
災害対応や除雪、インフラ整備など、地域の維持管理に必要な事業について継続的な協業関係を確保し、それらの事業を安定的に実施するために結成されるJVです。
経常JVと同様に、地域維持型JVとして入札参加資格を保有できます。
日常生活に伴う、地域の維持管理事業の担い手不足解消につながると考えられています。
復旧・復興建設工事共同企業体(復旧・復興JV)
地震や風水害などの大規模災害から、迅速な復旧・復興を図るために結成するJVです。
復興工事などで需要が高まる建設工事に対応するため、被災地で不足する技術者を確保するとともに、被災地域に精通している地元建設企業の施工力を強化できます。
復旧・復興JVとして入札に参加することも可能。
本来は地元の建設企業だけが入札に参加できる工事であっても、エリア外の建設企業も参加できるため、迅速に復旧・復興をすすめられます。
造園業がJVを組むメリット
造園業でJVを形成すると、資金力が増える、リスクを軽減できる、受注範囲が広がる、技術力の向上が望める、といったメリットがあります。
資金力が増える
複数の企業が共同出資するJVでは資金力を増やすことができます。
資金力が拡大すると信頼度が高まるため、金融機関からの借り入れもしやすくなり、比較的大規模な工事の入札に参加する機会も増え、施工実績の幅を広げることにもつながります。
リスクを軽減できる
造園業では施工中、地震や台風などの天災への備えが必須です。
自社だけで工事を受注すれば防災対策は全て自社で行わなければなりませんが、JVを形成していれば、構成する企業で分担することができるため、リスクが軽減できます。
また工事を受注するためにはさまざまな下準備が必要ですが、規模が大きければ大きいほど、人員や費用がかかります。
受注できなかった場合には赤字になってしまうことも。
JVを組んでほかの企業を協力して取り組めば、この人員や費用負担など経営上のリスクも軽減できます。
受注範囲が広がる
大規模工事ではとくに、自社だけでは人手が足りなかったり、設備や技術上、施工が難しい工事が含まれていたりすることがあります。
JVを組めば、それぞれの専門を活かして工事を分担できるため、今までは受注できなかった工事を請け負うことが可能に。受注範囲を広げることができます。
技術力の向上が望める
JVを形成して共同作業を行うことで、ほかの企業が持つさまざまな専門的知識や技術、ノウハウなどを間近で見ることができます。
自然を相手にする造園業は、言語化・マニュアル化しにくい知識や技術が多くあります。
経験豊富な他社の仕事を間近で体験すれば、多くの学びを得ることができるでしょう。
造園業がJVを組むデメリット
JVを組むデメリットには、損益や責任を連帯する可能性や、連携企業とトラブルなどがあげられます。
損益と責任を連帯して負う可能性がある
JVの施工方式には甲型JV(共同施工方式)と乙型JV(分担施工方式)の2つがあり、このうち甲型JVでは、出資比率に応じて利益が配分されます。
これは裏を返せば、利益だけではなく損失も配分されるということ。
自社の施工範囲で利益が出ていたとしても、万が一他社が損失を出していると、予定していた利益を得られない可能性があります。
また、乙型JVは損益配分はされませんが、品質や安全、工程など工事履行の責任は、連帯して負わなければなりません。
完工前に何らかの事情で他社が施工できなくなった場合に、他社に代わって作業を負担したり人員を確保したりしなければならないのです。
連携企業とトラブルになることがある
複数の企業が連携して業務を遂行するJVは、施工方針の違いで意思決定ができない、膠着状態になってしまい、話がすすめられず受注できないなどのトラブルに発展することがあります。
またJVでは自社の専門的知識や技術を他社に提供しますが、同時に自社の機密情報が流出してしまう可能性も。
さまざまなリスクを鑑み、連携する企業を選ぶことが大切です。
まとめ
JVは中小企業が中心の造園業にとって、大規模工事にチャレンジしやすくなったり、自社の新しい可能性を広げたりできる制度です。
JVの特性やメリットやデメリットを理解し、自社のスキルアップにつなげていきましょう。