登録造園基幹技能者とはどんな資格?
登録造園基幹技能士は、日本造園組合連合会と日本造園建設業協会が共同で発足させた民間資格です。
1995年に国の施策として建設業界の現状把握と課題解決のための「建設産業政策大綱」が作成され、その中で「基幹技能者の確保・育成」が必要であると提言されました。
翌年に具体的な取り組みに対する基本方針が策定されたことを受けてスタートしたのが、「造園基幹技能者」認定制度です。
この認定制度は建設業法の施行規則が2008年に改正されたことで、現在の「登録基幹技能者制度」として位置付けられました。
登録基幹技能者は、公共工事を発注者から直接請け負うときに受ける「経営事項審査」や、公共工事の発注で価格だけではなく入札参加者のさまざまな能力も合わせて審査・評価する「総合評価落札方式」における評価対象です。
建設業法で定める主任技術者としても認められているほか、建設キャリアアップシステムでは最高位の証しであるゴールドカードが付与されます。
一般財団法人建設業振興基金が行った調査では、登録基幹技能者を現場に配置することで、とくに品質・安全・工程管理において質の高い工事が行われたことが明らかにされています。
登録造園基幹技能者は民間資格でありながら、社会的評価の高い資格と言えるでしょう。
登録造園基幹技能者の仕事内容
基幹技能者とは、ほかの労働者を直接指導・監督する職長的な立場の人のことです。元請けの計画や管理業務にも参加し、それを補佐することもあります。
具体的には現場ごとの状況に応じて、施工方法や作業手順の提案、作成、指示、指導、工程の調整、連絡などを行うのが主な仕事です。作業員をどのように配置するかも基幹技能者が検討します。
基幹技能者は熟練の作業能力と豊富な知識で現場をまとめるとともに、現場の生産性向上と品質、コスト、安全面で質の高い施工を確保することが求められます。
作業を効率的に進めるためには高いマネジメント能力も必要でしょう。
造園業の仕事は庭園、緑地、公園などの設計・施工と維持管理が主な内容ですが、樹木や草花などの植物を植えたり剪定したりするだけではなく、建設機械を使って地面を整備したり園路に石を敷いて舗装路を作ったりとその作業内容は多岐にわたります。
また同じ形のものが存在しにくい植物や石などの天然素材を使い、周囲の環境を快適に美しくする造園業の仕事は、芸術的な側面も持ち合わせていると言えるでしょう。
登録造園基幹技能者は、造園業におけるさまざまな工事内容に精通した幅広い知識、技術、美的センス、経験に加えて、施工現場の総合的な管理能力が必要な仕事なのです。
資格取得までのフロー
登録造園基幹技能者になるためには、講習委員会が行う認定研修会である「登録造園基幹技能者講習」を受講しなければなりません。
認定研修会を受講するためには、日本造園建設業協会宛てに受講申込書、実務経験証明書、住民票(抄本)などの必要書類を郵送します。
郵送はA4サイズの封筒を使って簡易書留やメール便などの配達記録が残る方法で行います。研修会開催日の2週間前までに届くようにしましょう。
研修会が開催される各会場では定員を設けていて、定員に達すると申し込み受付を終了してしまうため、注意が必要です。
書類到着後、受験資格の審査が行われ、通過すると結果通知とともに受講料振り込みの案内が届きます。
振り込みが確認後に受講票と関係書類が送付されますので、これをもって認定研修会の受講申し込みは完了です。
合格すると講習修了証(カード)、腕章、ヘルメット貼付用のステッカーが送付され、「登録造園基幹技能者」として認定されます。
認定研修の概要
認定研修会は2日にわたって開催され、その中で10時間の講習と1時間の試験が行われます。
講習は基幹技能者としてのあり方、造園業の特性と必要な技能、建設業法や労働安全衛生法などの関連法規が主な内容です。
また基幹技能者はほかの労働者を指導・監督する立場であることや関係職種の基幹技能者と工程の調整を行うことから、OJT教育や実務に役立つ話し方、関係者との調整方法についても学びます。
施工方法や作業手順の作成・指示を行うため、資材管理、工程管理、原価管理、品質管理といった施工管理についても、それぞれ詳しい講義があります。
試験は研修会の講義内容から出題される、四者択一式の筆記試験です。
受験資格
登録造園基幹技能者の研修会に参加するためには、下記の3つの条件全てに該当していなければなりません。
1.1級造園技能士または1級造園施工管理技士の資格を有すること
2.造園工事業に関し10年以上の実務経験を有すること
3.職長経験が3年以上※であること。(※職長教育修了証の写しを添付)
引用:2023年度登録造園基幹技能者講習 受講申込概要
https://www.jflc.or.jp/
受験資格についてはこちらの記事でより詳しく解説していますのでご参照ください。
https://mqnavi.com/articles/archives/3002
まとめ
登録造園基幹技能者は造園工事の現場でほかの労働者を指導・監督する立場して働く中心的存在です。
民間資格でありながら、建設業法で定める主任技術者として認められていたり、公共工事における経営事項審査の加点対象であったりするなど、社会的な評価も高い資格と言えるでしょう。
その分受験資格は厳しく、1級造園技能士か1級造園施工管理技士の国家資格に加えて10年以上の実務経験、3年以上の職長経験が必要ですが、チャレンジする価値のある資格です。
豊富な経験と優れた技能者の証しでもある登録造園基幹技能者への需要は、今後ますます高まっていくでしょう。