コンクリート診断士とはどんな資格?持っているメリットや受験資格を解説

コンクリート診断士とはどんな資格?

コンクリート診断士は公益社団法人日本コンクリート工学会が認定する資格です。

従来のコンクリート関連資格が、新設するコンクリート構造物の設計、製造、施工に関するものであるのに対し、コンクリート診断士は既存のコンクリート構造物を対象としています。

さまざまな場所で使われているコンクリート構造物は、経年変化で劣化することを避けられません。

ですがこれらのコンクリート構造物は、適切な診断と処置を行うことで、その寿命を延ばすことができます。

コンクリート診断士は、既存のコンクリート構造物の劣化具合を調査、点検、補修、補強することで、これらを長く大切に使用するために生まれた制度です。

適切な診断と処置のためには、コンクリートに関する知識や技術だけではなく、倫理観を持ち合わせていることも必要です。

コンクリート診断士は、既存コンクリート構造物の診断と維持管理技術を兼ね備えたエキスパートと言えるでしょう。

コンクリート診断士を取得するメリット

コンクリート診断士は民間資格でありながら、国土交通省の技術者資格登録制度に担当技術者として登録されています。

出典:公共工事に関する調査及び設計等の品質確保に資する技術者資格登録簿
https://www.mlit.go.jp/tec/content/001586406.pdf

この制度は一定水準の技術力を持つと考えられる民間資格を、国や地方公共団体の作業に応用できるよう国土交通省が認定・登録するものです。

また都道府県によっては、コンクリート構造物の点検委託業務の発注においてコンクリート診断士の配置を必要とする項目があったり、技術者評価においてコンクリート診断士を加点対象としたりしています。

このようにさまざまな場面でコンクリート診断士の資格は評価されています。

コンクリート診断士を取得するには

コンクリート診断士の資格は、事前に「コンクリート診断士講習eラーニング」を受講し、その後「コンクリート診断士試験」を受けて合格すると取得できます。

受験資格
コンクリート診断士試験を受けるためにはまず、公益法人日本コンクリート学会が主催する「コンクリート診断士講習eラーニング」を受講しなければなりません。

講習を受講すると有効期間が2年間の受講修了証が与えられます。これは今年度のコンクリート診断士試験を受験できるのは「2023年度と2024年度の講習修了者」という意味です。

eラーニングの受講に加えて、コンクリート診断士試験を受験するためには、コンクリート主任技士、コンクリート技士、コンクリート構造診断士などの関連資格を所有していなければなりません。

また以下の資格所有者も受験できます。

・1級建築士
・建設部門の技術士
・農業部門の農業土木または農業農村工学の技術士
・土木学会認定  (特別上級・上級・1 級)土木技術者
・建設コンサルタンツ協会認定   RCCM(鋼構造及びコンクリート)
・プレストレストコンクリート工学会認定 コンクリート構造診断士
・1級土木施工管理技士または1級建築施工管理技士の監理技術者資格者証

このほかにも大学、高等専門学校、短期大学、高等学校などでコンクリート技術に関する科目を履修した卒業者であるかつ、学歴に応じて定められた実務経験があれば受験可能です。

出典:2024年度コンクリート診断士講習eラーニングおよび試験のご案内 P4 コンクリート診断士受験資格
https://www.jci-net.or.jp/

なおコンクリート診断士にはコンクリートに関する専門的な知識と経験に加えて、高いモラルや職業倫理を持っていることが求められます。

試験内容
コンクリート診断士試験の問題は、四肢択一式と記述式で構成されています。

出題範囲は以下のとおりです。

・ひび割れ、浮き、剥離などコンクリートの状態変化の種類と原因
・劣化の仕組み
・劣化予測と評価、判定基準
・外観調査やコンクリート強度試験などの調査方法
・対策の種類と補修・補強工法
・建築物や土木構造物の診断の考え方・調査項目
・技術およびJIS、JASS、コンクリート標準示方書などの基準類の変遷

試験ではこれらの内容について、一般的な知識と理解力が問われます。

出典:技報堂出版 コンクリート診断士試験問題出題傾向
https://gihodobooks.sslserve.jp/data/preview/jci_shindan.pdf

受験時のポイント
2023年度コンクリート診断士試験の合格率は15.7%でした。

出典:日本コンクリート工学会 2023年度コンクリート診断士試験結果の概況
https://www.jci-net.or.jp/

ここ数年の合格率を見てみても15~16%程度という結果です。コンクリート診断士試験は難易度の高い試験と言えるでしょう。

コンクリート診断士試験は関連資格がないと受験できませんが、これらの関連資格もまた、専門的な知識や技術を持った人が取得しているものです。

受験時にはしっかりと対策を立てて、実務に即した知識を身につけておくことが大切でしょう。

また2024年度のコンクリート診断士受講申し込みは、2023年12月4日から2024年2月5日で、受講期間は2024年4月5日から2024年5月20日でした。試験日は2024年7月21日です。

講習を受講するためには、前年から申し込みしなければなりません。受験の際には、申し込みも含めて早めに準備を整えておくことが必要です。

まとめ

コンクリート診断士は、公益法人日本コンクリート学会が認定する、コンクリート診断と維持管理のエキスパートに与えられる資格です。また知識だけでなく、高いモラルや倫理観を保有していることが前提となっています。

受験のためには、コンクリート診断士講習eラーニングの受講と、関連資格の保有、学歴に応じた実務経験が必要です。

難易度の高い試験のため、事前にしっかりと準備をしておきましょう。