造園業の見習いとは
造園業には様々な規模の企業が存在し、手掛ける仕事の種類も異なります。設計や工事などを手掛ける大手造園企業で会社員として働く労働者がいる一方、個人や家族経営の小規模な造園業では職人が主体になっている場合が少なくありません。
大手造園企業ならば他業種の企業同様に、採用活動を経て人材を選抜した上で教育を行い、雇用条件や社会保険などに関してもしっかり管理しています。
一方、職人が多い昔ながらの小規模な造園業では、口約束で未経験者が見習いとして仕事に入ったり、見習いとして造園業を手伝っている間に働くことになっていたりする人もいるでしょう。
見習いとは職人の技術を習得するために職人について仕事を学ぶ徒弟を指します。職人の世界は一人前になるまで長期間を要しますが、見習いは雑用や手伝いをしながら職人の技を見て、盗みながら一人前になるまで修行します。
ただ、口約束や雇用契約書の無い見習いは雇用条件や雇用時間管理などが曖昧で、就職したのに社会保険の加入をしてもらえていなかったなどの問題が発生しやすいでしょう。
また、小規模な造園会社は社会保険加入条件に関しての知識に疎い場合があるので注意が必要です。
社会保険加入の条件
造園会社だけでなく、労働者も社会保険加入条件を知っておくべきでしょう。
社会保険について
社会保険は広義で被用者保険と一般国民保険に分けられますが、造園業で雇用されて働く従業員の場合は被用者保険に該当します。
5種類ある被用者保険は更に狭義の社会保険と労働保険の2つのカテゴリーに分類でき、一般的に使う社会保険は狭義の社会保険を指している場合が多いです。狭義の社会保険は健康保険、いわゆる厚生年金保険を指す年金保険、介護保険の3つ、労働保険は雇用保険と労災保険を指します。
社会保険加入の条件を満たす場合、企業は社長や労働者の意思に関係無く社会保険に加入する義務があり、もし社会保険加入手続きを怠った企業は罰則が科せられます。
企業側の社会保険の加入条件
国内に企業はたくさん存在しますが、社会保険の強制適用事業所と任意適用事業所があります。社会保険に加入義務のある強制適用事業所の対象は法人企業、サービス業など一部の業種を除いた常時5人以上を雇用する個人事業所となっています。
任意適用事業所は強制適用事業所の対象外の企業ですが、必要な手続きを経て厚生労働大臣の認可を受けると社会保険に加入できます。
労働者側の社会保険の加入条件
社会保険の適用事業所で正規社員として働く労働者は、社会保険に加入しなければなりません。
また、以前は社会保険に未加入のアルバイトやパート労働者は珍しくありませんでしたが、平成28年10月1日から社会保険の適用範囲が拡大され、より多くのアルバイトやパート労働者が社会保険加入義務の対象となりました。
今まではアルバイトやパート労働者が常時雇用で、正社員の4分の3、つまり週30時間以上労働することが社会保険加入の条件でした。
拡大された社会保険の適用条件は、所定労働時間が週20時間以上、賃金が月額8.8万円以上、雇用期間の見込みが1年以上、学生ではないこと、企業の従業員が501人以上の場合であり、短時間労働者にも社会保険が適用されます。
また、従業員が500人以下の会社であっても労使で合意されれば社会保険に加入できます。
労働保険について
広義での社会保険に含まれる労働保険には雇用保険と労災保険があり、それぞれ加入条件が異なります。
労働者が雇用保険の被保険者となる条件は、1週間の所定労働時間が20時間以上、且つ31日以上の雇用見込みがある場合です。企業は条件を満たす労働者を雇えば、必ず雇用保険に加入しなければなりません。
労災保険は、雇用形態に関係無く一人でも従業員を雇用している企業なら加入しなければならない保険です。労働保険や社会保険に関する詳細は厚生労働省のHPで閲覧できます。
社会保険加入の必要性
社会保険とはわかりやすく言えば失業や怪我、病気など仕事や日常生活を送る上で想定されるリスクへの備えです。
企業にとっての社会保険の必要性
一昔前は建設業や造園業で社会保険に未加入の会社は珍しくありませんでしたが、社会保険の適用範囲が拡大されるなど昨今では社会全体が社会保険未加入の企業を見る目が厳しくなっています。
社会保険未加入の企業は世間にブラックと捉えられかねないなど、社会保険未加入のデメリットは幾つもあります。また、造園業でも建設許可を得て造園工事を手掛ける企業は多いですが、2020年秋には建設業許可要件に社会保険加入が加わりました。
従業員にとっての社会保険加入のメリット
従業員が社会保険に加入するメリットは複数あります。
まず、企業が保険料を半分負担してくれること、年金の受取額の増加が挙げられるでしょう。
社会保険は企業と従業員がそれぞれ半分ずつ保険料を負担する仕組みです。一般国民保険なら労働者が国民年金を全額負担しなければなりませんが、厚生年金保険では会社が半分負担しているのに労働者の将来の年金受取額は国民年金よりも多くなる点がメリットです。
また、社会保険に加入していると、障害年金額も厚生年金と同様に多くなります。健康保険に関しては、傷病や出産などで長期休職する際に手当金を受け取れる点は労働者にとってありがたいでしょう。
まとめ
造園業の見習いを卒業してから社会保険に入れてもらえるように申し出るのは間違いであり、見習いの段階でも社会保険の加入条件を満たしていれば社会保険に加入しなければなりません。
造園業の見習いとして働いている人は、条件を満たしているなら会社に、社会保険に加入したいことを伝えてみましょう。