造園施工管理主任技術者とは
造園業は個人邸宅の庭作りをする職人イメージを持たれがちですが、実は公共施設等で工事も多く手掛けています。
国土交通省の告示によると、造園業は整地や樹木の植栽、景石の据え付け等による苑地の築造の他、道路や建物の屋上を緑化したり、植物を復元したりする工事を手掛けています。
請負金額が500万円を超える造園工事になると建築業許可が必要なため、より幅広く、規模の大きい仕事を受注するために建築業許可を取得している造園業は少なくありません。建築業許可を取得している造園業が工事をするにあたって設置が求められるのが造園施工管理主任技術者です。
主任技術者は請負金額の大小、元請けと下請けに関係なく設置しなくてはならないと建設業法第26条第1項で定められています。
ただし、大規模工事に配置が必要な監理技術者を配置する場合や建築業許可を取得していない企業が500万円未満の小規模工事を行う場合に関しては主任技術者は必要ありません。
造園施工管理主任技術者の業務については建設業法26条3項で規定されており、造園工事を適切に実施するための施工計画書の作成、工程管理、品質管理、技術上の管理、施工従事者の指導監督などが挙げられています。
造園施工管理主任技術者は誰もがなれるわけではありません。主任技術者になるためには学歴と実務経験に関する要件を満たすか、国家資格である造園施工管理技士に合格する必要があります。
造園施工管理技士は2級と1級がありますが、2級では主任技術者のみ、1級では主任技術者に加え、監理技術者になることも可能です。
造園施工管理技士の資格取得者を擁する企業は公共工事への入札が有利になる等のメリットがあるため、造園業における造園施工管理技士の資格所有者への評価は高くなっています。
造園施工管理主任技術者が現場にいなくてはいけない理由
造園業には色々な職種があり、営業所で働く人もいれば、外で働く人もいます。
例えば、主任技術者と名称が似た職種である専任技術者は営業所で働きます。企業が建設業許可を取得し、維持するために必要な存在である専任技術者は営業所への常駐義務があるからです。
一方、専任技術者とは異なり、許可を得た造園業が造園工事を行う場合に必要な主任技術者は工事現場への配置が義務付けられています。専任技術者と主任技術者は役割の違いからも兼任は不可能です。
また、主任技術者は単に現場に設置すれば良いわけではなく、請負金額が3500万円以上の公共工事に関しては専任設置が義務付けられています。
専任設置義務まで設けて主任技術者が現場にいなくてはいけない理由は、工事を適切に施工するための管理や安全確保等、現場における一連の作業の責任をすべて担っているからです。
造園施工管理主任技術者の業務には工事計画書や見積書の作成など事務所での作業もありますが、工事が工程通りになっているか進捗を確認したり、工事現場に立ち会って品質管理をしたりすることは現場でしかできません。
また、施工に従事する作業員の技術指導等も現場だからこそできる仕事です。現場作業員は年齢や性別、経験、関連資格の保有状況などによって能力も異なるため、作業を安全に効率良く進めるために主任技術者は個人の特性を理解したうえで適正配置を行い、法令規制を徹底しなければなりません。
ただ、近年は建築業法が改正されており、主任技術者の専任要件が緩和されています。一体性や連続性のある工事、10キロメートル前後の工事現場等では2件まで主任技術者の兼任が認められています。
また、専任特定専門工事一括管理施工制度によってある条件の下で主任技術者の配置が不要になるなど建設業法の改正が相次ぎ、今後も主任技術者に関する法改正には注目するべきでしょう。
造園施工管理主任技術者に求められることと必要なスキル
造園施工管理主任技術者は学歴や実務経験の要件を満たすか、資格を取得すれば就けますが、何よりも経験やスキルを求められる職種です。
工事現場が仕事場となるため、屋内での仕事とは異なる大変さがあるでしょう。例えば、酷暑や極寒の中でも外で仕事をしなければならないため、体力が必要です。
また、主任技術者は他の工事従事者より作業量も多く、責任が重いので負担を感じるかもしれません。
造園施工管理主任技術者の業務に関しては、工事が適切に行われるように工事現場において全体を見ながら現場作業員に技術上の管理や監督ができるリーダーシップが求められます。
造園工事は一人で進める仕事ではありません。主任技術者は現場作業員への指示や意見交換を積極的に行う必要があります。取り引きのある企業とのやりとり、工事現場の近隣住民への挨拶などもスムーズに行わなければならないため、高いコミュニケーション能力や指示力も問われるでしょう。
知識や経験、技術、コミュニケーション能力等、様々なことが求められる造園施工管理主任技術者ですが、責任が大きく大変な仕事である分、やりがいも感じられるはずです。
環境へ注目が集まる現在、造園施工管理主任技術者の需要は今後より高まると予想されます。多くの造園企業が造園施工管理主任技術者を求めており、転職にも有利に働くでしょう。