森林環境の保全や林業経営など、林業のさまざまな場面で活躍する専門的な技術者の証しである「林業技士」。
本記事では林業技士について、仕事内容や取得方法も含めて紹介します。
林業技士とは
「林業技士」は日本森林技術協会が、森林・林業の専門的技術者に対して認定・登録する資格です。
林業経営、林業機械、森林土木などの8部門があり、それぞれ業務内容や目標とする技術者像が異なります。
民間資格ではありますが、林業技士は社会的にも評価が高い資格と言えます。
林業技士の仕事内容
林業技士の仕事は、部門によって異なります。
林業経営
森林経営計画の作成、造林・木材生産事業などの調査・実施が主な仕事です。また木材需要状況を把握し、木材を適切な長さや太さに加工するなどします。
林業機械
さまざまな種類がある林業機械を、安全かつ効率的に用いて木材を生産するための作業システムを選択したり、実際に林業機械を使って木材生産を行ったりします。
また安全に作業ができるよう、作業者に対する指導も行います。
森林土木
森林は木材を生産するだけではなく、水を蓄えたり、洪水・山崩れを防いだりと、さまざまな役割をもっています。
森林を守り育てることにより、この役割を発揮させることを「治山」と言います。治山や林道などの調査設計、施工管理を行うのが、森林土木の仕事です。
森林評価
森林の売買や相続の際、林地や木の価格評価を行います。価格評価に伴い、境界確定、森林測定なども担当します。
森林環境
生物多様性を保全するための森林管理、森林生態系の推移を把握するためのモニタリング調査などが主な仕事です。
実施しようとする事業が環境にどのような営業を及ぼすのか、調査、予測、評価を行う、環境影響評価も行います。
林産
木材関連の知識や技術を把握した上で、木材産業の運営を行います。具体的には木材の流通や加工、利用に関する業務を遂行します。
森林総合監理
持続可能な森林管理や森林計画策定、森林認証関連の業務を行います。
森林認証とは、森林経営の持続性や環境保全への配慮などについて、一定の基準を満たしている森林や経営組織を、第三者機関が認定する制度です。
作業道作設
切り出した木材を搬出したり、新しく苗木を植えたりするために、「作業道」と呼ばれる道が欠かせません。
森林・地形状況に応じて、適切に作業道を配置計画し、施工、管理するのが作業道作設の仕事です。
林業技士になるには
林業技士になるためには、部門ごとに定められた養成研修または資格要件審査を受けます。
8部門のうち、森林土木と作業道作設部門は資格要件審査、それ以外の部門は養成研修です。
養成研修を受けるためには、実務経験が必要です。この年数は、最終学歴と林業関係の学科を卒業しているかによって異なります。
研修は送付されたテキストを使用して自主学習を行い、レポートを作成します。このレポートに対して一度審査が行われ、合格すると東京都内で行われるスクーリング研修に参加できます。
最終的な合否は、スクーリング研修での成績評価で決定されます。
対して、資格要件検査が必要な「森林土木部門」と「作業道作設部門」についても申請資格があります。
具体的に森林土木部門は「1級土木施工管理技士であって森林土木に関する業務の実務経験を7年(84か月)以上有する者」でないと、受けられません。
また作業道作設部門についても、受験には「作業道の作設に関する業務の実務経験が5年以上あり、おおむね20km以上の作設経験を有する者であり、かつ林業経営部門の有資格者であること」が条件とされています。
森林土木部門の資格要件審査はレポートによる評価、作業道作設部門は筆記試験によって、合否判定されます。
林業技士以外でおすすめの造園業資格
林業技士と同じように樹木を扱うことが多い造園業でも、業務に応じてさまざまな資格があります。
そこで本章では造園業でおすすめな資格を3つ紹介します。
造園施工管理技士
造園施工管理技士は、造園施工管理技術検定合格者に与えられる国家資格です。造園施工管理技士になると、営業所ごとに置く専任技術者、建設工事の現場に置く主任技術者・監理技術者として認められます。
1級と2級の2種類があり、検定試験の難易度、建設業許可基準に定められたどの技術者として認められるか、受検資格が異なります。
造園技能士
造園技術での高度な専門知識と技術を持つ国家資格の一種で、1級、2級、3級があります。
1級・2級・3級は全て、学科試験と実技試験の両方に合格しなければ取得できません。
エクステリアプランナー
公益社団法人日本エクステリア建設業協会が主催する民間資格で、1級と2級があります。
造園業の業務の中でもとくに、一般住宅や共同住宅の建物まわりの設計や工事監理に重点をおいた資格です。
まとめ
林業技士は、日本森林技術協会が森林・林業の専門的技術者に対して認定・登録する民間資格です。
林業経営、林業機械などの8部門があり、仕事の内容や資格の取得方法が異なります。
森林に関する専門的な知識を活かして、林業技士は林業経営や木材生産、森林保護のための治山や生態調査など、さまざまな仕事をしています。
林業技士になるためには、部門ごとに定められた養成研修または資格要件審査を受けなければなりません。
またこれらの研修・審査は最終学歴などで規定された実務経験が必要ですので、注意しましょう。